最新記事

ブレグジット

英総選挙で圧勝したジョンソン首相 それでもブレグジットは前途多難

2019年12月21日(土)14時15分

英総選挙では、欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を断行すると約束したジョンソン首相(写真)率いる保守党が圧勝した。英ダラムで14日代表撮影(2019年 ロイター)

英総選挙では、欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を断行すると約束したジョンソン首相率いる保守党が圧勝した。しかし、これは始まりにすぎず、ようやく無秩序な離脱を免れたと喜ぶ有権者には、現実が待ち受けている。

選挙に勝利したジョンソン氏は、10月にEUと合意した離脱案への議会承認を得られるはずなので、来年1月31日にブレグジットが実現するだろう。

英国はその後、来年末までの「移行期間」に入る。ジョンソン氏は、貿易を含むEUとの新たな関係について交渉するのに十分な期間だと述べている。

しかし、なお多くの障害が待ち構えており、英国が1年後に再び「合意なき離脱」の崖っぷちに立つ可能性は残ると、EU側の外交官や高官らは指摘する。

ドイツのメルケル首相は13日のEU首脳会議の記者会見で「非常に複雑だ。貿易、漁業など数々の通商関係や、安全保障、外交の協力について交渉することになる」とし、「最大のハードルは、これらの問題を非常に迅速に解決する必要があることだろう」と付け加えた。

移行期間延長の公算高まる

EUは来年3月までに英国との貿易交渉を始めたい意向だ。その場合、合意を結んだ上で英国、EU、EU加盟諸国の承認を得るのに10カ月しか残されていない。

EUとの貿易協定は通常、締結までに何年間も要する。英国と合意に達するのに現行の移行期間で十分だと考えるEU関係者はほとんどいない。

移行期間は1年もしくは2年延長することができるが、英国が来年6月末までに延長を要請しなければならない。

議会で過半数を大幅に上回る議席を確保したジョンソン氏は、選挙前に比べて党内の強硬離脱派に配慮する必要が薄れ、移行期間を来年末以降に延長しないという選挙公約に背くかもしれない。

シンクタンクのユーラシアに所属するムジュタバ・ラーマン氏は「ジョンソン氏の圧勝により、来年に合意なき離脱が起こる確率は低下した。必要に迫られれば移行期間を2020年12月より先まで延長する公算が高まったからだ」と話す。

ジョンソン首相が来年末までにEUと合意できず、しかも自分で決めた期限の延長を拒むなら、法律上は合意なき離脱が既定路線だ。

EU高官らは、6月末という延長要請の期限をずらすのは容易ではないだろうと指摘している。

英国が来年より先まで移行期間にとどまる場合、EUは21―27年の新たな予算期間に入るため、金銭面の問題を解決する必要が生じる。英国はEU予算への拠出継続を渋りそうなため、この交渉は一筋縄ではいかないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、方向感欠く取引 来週の日銀

ビジネス

米国株式市場=3指数下落、AIバブル懸念でハイテク

ビジネス

FRB「雇用と物価の板挟み」、今週の利下げ支持=S

ワールド

EU、ロシア中銀資産の無期限凍結で合意 ウクライナ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中