英総選挙で圧勝したジョンソン首相 それでもブレグジットは前途多難
EUが望む「ゼロ・ダンピング」
EUは、公正な競争を保証する確固とした条項が盛り込まれない限り、経済大国である英国との貿易協定は結ばないと強調している。
EUの要求は環境・労働基準に重点が置かれている。また、英国がEU単一市場において不公正な低価格で商品を販売できないよう、国の補助金を巡る規則も重視している。
ジョンソン首相が貿易協定について主張する「ゼロ関税、ゼロ割り当て」に加え、EU側は「ゼロ・ダンピング」の保証も求めている。
EU高官は「英国がカジノとシンガポールの中間のような姿になるなら、われわれは競争環境公平化の問題を厳しく追求する」と話す。
英国にとっての難題は、米国と2国間貿易協定を結ぶために農業・食品基準を緩和するよう迫られていることだ。これはEUにとって越えてはならない一線であり、域内の生産者を守るために市場アクセスを制限するだろう。
漁業と安全保障
EU諸国は従来のように英国の海域内で漁業ができなくなるため、漁業は特にやっかいな問題だ。
英国とEUは、EUがノルウェーと結んでいるような漁獲割り当てについて交渉するとみられる。しかし、高官らによると、交渉は長引き、場合によっては激しい論争となりそうだ。
自動車や医薬品などEUの産業サプライチェーンは多くの国境をまたいでいるため、生産地をどこに指定し、規制や税をどう適用するかという問題も難航しそうだ。
安全保障を巡っては、EUと英国は犯罪に関する機密情報を共有するとしているが、EUが過去に第三国と行ったこうした交渉は複雑で、長期化している。
英保守党が選挙で過半数を大幅に超える議席を制したことで、党内の強硬離脱派の影響力が弱まったのであれば、ジョンソン首相はEUとの緊密な協調に傾くかもしれない、とEU外交官らはみている。
フランスのマクロン大統領は、13日の記者会見で「ジョンソン氏が非常に野心的な貿易協定を望むなら、われわれは非常に野心的な規制の収れんが必要になる。ご遠慮なくどうぞ」と述べ、そうした展開に期待を寄せた。


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