最新記事

ホワイトハウス

トランプのアフガン電撃訪問 情報リークに悩むWH、隠密作戦の内幕

2019年12月7日(土)12時30分

情報がリークされることで名高くセキュリティー上の手落ちも多い米ホワイトハウスが、先週のトランプ大統領によるアフガニスタン電撃訪問では、いつになく用意周到だった。写真は28日、バグラム米空軍基地で(2019年 ロイター/Tom Brenner)

情報がリークされることで名高くセキュリティー上の手落ちも多い米ホワイトハウスが、先週のトランプ大統領によるアフガニスタン電撃訪問では、いつになく用意周到だった。秘密裏に事を進めるのに成功。大統領が機上にいる間に、準備してあったツイートを投稿するなどして、訪問が狙い通りの形で報道されるよう策を練ったと政権高官らは語る。

トランプ氏は26日、アフガニスタンのバグラム米空軍基地を予告なしで訪れた。アフガン訪問は初めてで、紛争地域を訪れるのは大統領就任以来2度目。バグラムでは駐留米兵らに七面鳥の夕食を振る舞い、自撮り写真の求めに応じ、米国と反武装勢力タリバンは和平協議の再開を望んでいると記者団に話した。

往復の移動時間を含め33時間のアフガン訪問で最も意外だったのはおそらく、トランプ氏が帰国に向け現地を出発する直前まで、訪問をひた隠すのに政府が成功したことだろう。ホワイトハウスのグリシャム報道官によると、ホワイトハウスは数週間前から訪問の準備を進めていた。

情報リークとトランプ氏の気ままなツイッター投稿に何度も足をすくわれてきたホワイトハウスは、今回の訪問をごく内輪の当局者にしか知らせなかった。

トランプ氏は26日、すべての出張に同行している記者団を伴い、公式日程通りフロリダ州の高級リゾートホテル「マールアラーゴ」に飛んだ。

28日午後、日程通り駐留米軍との電話会談のために姿を現すトランプ氏を待っていた記者団は、大統領が米兵らと直接会うため、昨晩のうちに1万3400キロ彼方のアフガニスタンに旅立ったことを知らされる。

「そこは危険地帯で、彼(トランプ氏)は軍を励ましたいのです」。27日夕、大統領専用機エアフォースワンに搭乗していた少数の記者団にグリシャム報道官はこう語り、ホワイトハウスが大統領の本当の動きを隠した意図を説明していた。

これらの「第2記者団」がワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地近くの駐車場にこっそり集合したのは、ほんの数時間前のことだ。記者らはミニバンに乗り、大統領がいつも離陸する基地へと送迎された。

これに先立ち、この記者らはトランプ氏がお忍びでどこか秘密の場所を訪れることを知らされていた。

基地に入った途端、記者らはスマートフォンや、電波を発信できるあらゆる機器を没収され、返却されたのはトランプ氏がバグラムに到着してから少なくとも2時間後だった。

グリシャム氏によると、13時間のフライト中、ホワイトハウスのスタッフを含め、エアフォースワンの搭乗者はだれ1人としてスマホにアクセスできなかった。客室はほとんど消灯され、窓のブラインドは閉められたままだった。

昨年のクリスマス、駐留米軍慰問のためイラクに向かっていたエアフォースワンを、イングランド上空で航空機追跡マニアが発見。見紛うことなきトルコブルーをあしらった機体の写真がツイッターに投稿され、SNS上で大騒ぎになった。前日に数十もの投稿があったトランプ氏のツイッターがいつになく静かなこともあり、同氏は紛争地域に向かっているとの臆測が飛び交った。

グリシャム氏によると、ホワイトハウスは今回、大統領のツイッターアカウントが継続性を保つよう準備し、大統領が機中にいる間に感謝祭を祝う投稿が流れるようにした。

バグラム基地で「USA」の連呼で迎えられたトランプ氏は「素晴らしい感謝祭ディナーだった」と演説。「どこか別の場所でディナーすることになると思っていたよ」と語った。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191210issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月10日号(12月3日発売)は「仮想通貨ウォーズ」特集。ビットコイン、リブラ、デジタル人民元......三つ巴の覇権争いを制するのは誰か? 仮想通貨バブルの崩壊後その信用力や規制がどう変わったかを探り、経済の未来を決する頂上決戦の行方を占う。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米上院通過の税制・歳出法案、戦略石油備蓄の補充予算

ビジネス

物言う株主、世界的な不確実性に直面し上半期の要求件

ワールド

情報BOX:日米関税交渉の経緯、協議重ねても合意見

ワールド

豪小売売上高、5月は前月比0.2%増 予想下回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中