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中学以降も電卓を使わせない日本の遅れた数学教育

2019年12月5日(木)15時15分
舞田敏彦(教育社会学者)

だがこれは小学校4年生のデータで、年齢が上がると事情は変わってくる。中学校になると、電卓を使わせる教員が多くなる。アメリカは小学校4年生では40%だが(上表)、中学校2年生になると65%に増加する。シンガポールでは、変化はもっとドラスティックだ。日本、アメリカ、シンガポールという3カ国を取り出し、小学校4年生と中学校2年生の電卓使用率をグラフにすると<図1>のようになる。

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電卓の使用頻度は小学校では日本が最も高いが、中学校になるときれいに逆転する。日本は小・中学校で変化はほぼないが、他の2カ国はそれがはっきりしている。小学校では計算力の訓練、中学校以降では考えることや説明に重きが置かれているのだろう。国際的にみると、こういうタイプの国が多い。

日本もカリキュラムの上ではそういう枠組みで、小学校では筆算力を鍛え、中学校では電卓を適宜使い、学習効果を高めることとされている(新学習指導要領)。しかし現実には、そのようなステップアップはされていないようだ。

欧米では中等教育以降は試験でも電卓が使えるようになり、数桁の筆算を紙と鉛筆でガリガリとやる日本の生徒を見ては大いに驚く。発達段階が上がるとともに、思考や説明(表現)に重点を移していくべきだ。授業での電卓使用の国際比較から、日本はその余地が多分にあることが分かる。

<資料:IEA「TIMSS 2015」

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