最新記事

事件

英トラック死亡事件、犠牲のベトナム人密航者のうち16人が無言の帰国

2019年12月1日(日)13時01分
チュック・グエン

イギリスで亡くなったベトナム人たちが母国へ無言の帰還をした。 REUTERS

<苦しい家計のために密航した犠牲者だが、その遺体返還は残された家族へ新たな重荷に>

10月23日、イギリス・ロンドン東部エセックス・グレイズに止まっていたトラックのコンテナから、亡くなった状態で密航者39人が発見されてから1カ月あまり。その後の調べで全員がベトナム人だと判明したが、ようやくこの39人の遺体について本国送還が始まった。

11月27日早朝、ベトナム・ハノイのノイバイ空港に到着したベトナム航空機から、16の棺が運び出された。無言の帰国を果たした16人の遺体はすぐに救急車に乗せられ、北中部のゲアン、ハティン、クアンビンの3省で待つ家族の元へ引き渡されたという。

故郷に帰ってきた遺体は、それぞれの家族によって葬儀が行われ、遺族や親族、近隣の人びとなど数百人が集まり、故人の冥福を祈った。現地のしきたりに従って遺族は夜通しで棺に付き添い、翌28日に悲しみのうちに愛する家族を埋葬した。

亡くなった39人の中には15歳の少年も

ロンドン北東の工業団地で、冷凍トラックの荷台コンテナから39人の遺体が発見されたこの事件。当初は英警察は犠牲者を中国人と発表していたが、その後の調査で全員がベトナム人であることが判明。その後はベトナム当局と共同で身元確認を進めていた。

事件が発覚してから1カ月にわたる捜査で、犠牲者は男31人女8人で、そのうち2人が15歳の少年だったことがわかっている。彼らは経済的に苦しい状況を何とかしようと高給の仕事を見つけるため、ゲアン21人、ハティン10人、クアンビン3人、ハイフォン3人、ハイズオン1人、トゥアティエン-フエ1人と、ベトナム各地から違法な渡航手段でイギリスに渡り、悲劇的な結末を迎えたという。

犠牲者のひとり、19歳の女性ティンは、8月にハノイから270 km離れた地元の村を出て中国に密入国し、その後ブローカーに導かれてドイツのベルリンを経由してベルギー・ゼーブルージュ港に到着。そこで、他の犠牲者たちとともに冷凍コンテナに入れられてフェリーでイギリスに。コンテナはドーバー海峡を渡り、イギリスのテムズ川沿いにあるパーフリート港でトラックに載せられ、ロンドン近郊のグレイズにある工業団地で警察に発見された。そのときにはティンたち39人のベトナム人は既に亡くなっていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ビジネス

米国株式市場=小幅高、利下げ期待で ネトフリの買収
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中