最新記事

アメリカ政治

トランプ弾劾はあり得なさそうで、実はあり得る

Getting to 67%

2019年11月27日(水)20時00分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

magw191127_Trump2.jpg

世論調査では弾劾を支持する有権者も増えている MAX HERMAN-REUTERS

マコネルに近い上院関係者によれば、「彼は大統領にこう伝えている。自分は共和党から造反者が出ないようにする、だから大統領も協力してくれと」。一方的に忠誠を求めるだけでは「この手の話は進まない」とも。

熱い党派心が裏目に?

共和党は現在までトランプの下で結束してきた。党への忠誠心が強いからこそ、今回はそれが裏目に出るかもしれない。バージニア大学の政治学者ラリー・サバトに言わせると、今のアメリカ政治は妙に「全国化」している。つまり、大統領に対する好き嫌いと上院選の勝敗が直結している。実際、2016年に上院選が行われた州では例外なく、議席を獲得した党が大統領選も制していた。1912年に上院の公選制が導入されて以来、初めてのことだ。

そしてサバトの言うように、弾劾裁判は究極の「全国的行事」となり得る。注目すべきは、来年の選挙で再選を目指す激戦州の共和党現職3人だ。コリー・ガードナー(コロラド州)、マーサ・マクサリー(アリゾナ州)、そしてジョニ・アーンスト(アイオワ州)である。最初の2人は大接戦が予想される。コロラドではトランプの人気がないし、アリゾナも似たようなものだ。

全国化説が正しいなら、支持率の低迷する大統領に無罪放免の票を投じる行為はガードナーとマクサリーにとってリスクが大きいだろう。

アーンストは今のところ優勢を伝えられるが、油断はできない。アイオワ州の農業は中国との貿易戦争で大きな被害を被っているからだ。

トランプの不品行にはアーンストも不満を抱いている。関係者によると、ポルノ女優に口止め料を払ったことや、テレビ番組取材中の卑猥な発言などについてだ。彼女はこれまで、表向きはトランプを支持してきたが、本音は違うようだ。その彼女が公然と背を向けるとなれば、ほかにもいる「隠れトランプ嫌い」の議員が追随するかもしれない。

例えばノースカロライナ州のトム・ティリス。再選の見込みは五分五分とされる。前回はトランプが制した州だが、来年は確実とは言えない。

弾劾回避でも弱体化か

トランプ政権が恐れるシナリオがある。それは弾刻裁判で共和党から多くの離反者が出て退任を余儀なくされるという危険性ではない。

危険なのは、たとえウクライナ疑惑で無罪になっても、政治的な立場が弱くなったように見えることだ。そうなると選挙戦で州知事や連邦議員を目指す候補たちの足を引っ張りかねない。

上院の弾劾裁判は公明正大に行われるだろう。数の力で有罪を宣告する場ではない。保守派のジョン・ロバーツ連邦最高裁長官が裁判長を務め、反対尋問も弁護側の証人を呼ぶこともできる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送米、NATO東部地域から一部部隊撤退へ=ルーマ

ワールド

Azureとマイクロソフト365で障害、利用者数万

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で「的を絞った」攻撃 停戦履

ビジネス

米キャタピラー、7─9月期は増収 AI投資受け発電
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 6
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 7
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    怒れるトランプが息の根を止めようとしている、プー…
  • 10
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中