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トランプ弾劾はあり得なさそうで、実はあり得る

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2019年11月27日(水)20時00分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

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世論調査では弾劾を支持する有権者も増えている MAX HERMAN-REUTERS

マコネルに近い上院関係者によれば、「彼は大統領にこう伝えている。自分は共和党から造反者が出ないようにする、だから大統領も協力してくれと」。一方的に忠誠を求めるだけでは「この手の話は進まない」とも。

熱い党派心が裏目に?

共和党は現在までトランプの下で結束してきた。党への忠誠心が強いからこそ、今回はそれが裏目に出るかもしれない。バージニア大学の政治学者ラリー・サバトに言わせると、今のアメリカ政治は妙に「全国化」している。つまり、大統領に対する好き嫌いと上院選の勝敗が直結している。実際、2016年に上院選が行われた州では例外なく、議席を獲得した党が大統領選も制していた。1912年に上院の公選制が導入されて以来、初めてのことだ。

そしてサバトの言うように、弾劾裁判は究極の「全国的行事」となり得る。注目すべきは、来年の選挙で再選を目指す激戦州の共和党現職3人だ。コリー・ガードナー(コロラド州)、マーサ・マクサリー(アリゾナ州)、そしてジョニ・アーンスト(アイオワ州)である。最初の2人は大接戦が予想される。コロラドではトランプの人気がないし、アリゾナも似たようなものだ。

全国化説が正しいなら、支持率の低迷する大統領に無罪放免の票を投じる行為はガードナーとマクサリーにとってリスクが大きいだろう。

アーンストは今のところ優勢を伝えられるが、油断はできない。アイオワ州の農業は中国との貿易戦争で大きな被害を被っているからだ。

トランプの不品行にはアーンストも不満を抱いている。関係者によると、ポルノ女優に口止め料を払ったことや、テレビ番組取材中の卑猥な発言などについてだ。彼女はこれまで、表向きはトランプを支持してきたが、本音は違うようだ。その彼女が公然と背を向けるとなれば、ほかにもいる「隠れトランプ嫌い」の議員が追随するかもしれない。

例えばノースカロライナ州のトム・ティリス。再選の見込みは五分五分とされる。前回はトランプが制した州だが、来年は確実とは言えない。

弾劾回避でも弱体化か

トランプ政権が恐れるシナリオがある。それは弾刻裁判で共和党から多くの離反者が出て退任を余儀なくされるという危険性ではない。

危険なのは、たとえウクライナ疑惑で無罪になっても、政治的な立場が弱くなったように見えることだ。そうなると選挙戦で州知事や連邦議員を目指す候補たちの足を引っ張りかねない。

上院の弾劾裁判は公明正大に行われるだろう。数の力で有罪を宣告する場ではない。保守派のジョン・ロバーツ連邦最高裁長官が裁判長を務め、反対尋問も弁護側の証人を呼ぶこともできる。

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