最新記事

アメリカ政治

トランプ弾劾はあり得なさそうで、実はあり得る

Getting to 67%

2019年11月27日(水)20時00分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

果たしてトランプは上院で裁かれるのか(写真は今年2月5日の上下両院合同議会で一般教書演説をするトランプ) AL DRAGO-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

<上院の弾劾裁判で3分の2が賛成すれば有罪に――トランプは罷免への流れを切り抜けられるのか>

心配したくなる理由が、共和党多数の上院を率いるミッチ・マコネル上院院内総務にはある。だからドナルド・トランプ米大統領も心配したほうがいい。

このまま弾劾裁判まで進んだとして、トランプを有罪にするには上院議員の3分の2以上、つまり67人以上の賛成が必要だ。計算上、最低でも上院の共和党議員から20人の造反者が出なければならない。民主党のジョー・マンチン(ウェストバージニア州)とダグ・ジョーンズ(アラバマ州)が弾劾反対に回る可能性を考慮すれば22人だ。3分の2までの道は狭く、険しい。

それでもマコネルとホワイトハウスには不安がある。一握りの共和党議員が党の方針に反して公然と弾劾支持を表明した場合、党内で造反ドミノが起こる可能性だ。

そもそも党内には根っからの反トランプ派がいる。今年引退したジェフ・フレーク元上院議員はこの9月に、もしも無記名投票なら共和党から35人が弾劾に賛成すると発言した。そして大ベテランのミット・ロムニー(ユタ州)。かつてバラク・オバマと大統領の座を争って敗れた男だが、トランプとは犬猿の仲だ。

今回の弾劾調査のきっかけとなったウクライナ疑惑について、ロムニーは「ぞっとする」とコメントした。するとトランプは得意のツイッターで「尊大なばか者」と罵倒した。弾劾への賛否について、ロムニーは「白紙」としているが、トランプ陣営は初めからロムニーの票を計算に入れていない。

現状で気掛かりなのはスーザン・コリンズ(メーン州)とリサ・マーカウスキー(アラスカ州)だろう。共に女性で、マーカウスキーは2017年にオバマケア(医療保険制度改革)の一部を廃止する法案の採決で反対に回り、トランプのもくろみを頓挫させた。

コリンズは来年の選挙で再選を目指すが、接戦と伝えられる。トランプが民主党有力者ジョー・バイデン前副大統領の息子に関する調査を外国政府に依頼したのは「大きな間違い」だと批判し、下院の弾劾調査をトランプが「リンチ」と決め付けたツイートの撤回も求めている。

マコネルは、この2人の動きを警戒している。敵の多い大統領の世話役に徹するマコネルはトランプに、マーカウスキーに電話して、彼女が推進するエネルギー法案への協力を約束するよう進言した。またロムニーへの中傷をやめるよう忠告してもいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中