米議会、香港人権法案可決の意味 失う「特別な都市」の地位

米議会下院は、中国の香港に対する介入をけん制するための「香港人権・民主主義法案」を可決した。関係者の話では、トランプ大統領が数日中に法案に署名する見通しだ。写真は星条旗を掲げる香港のデモ隊。9月20日撮影(2019年 ロイター/Jorge Silva)
米議会下院は20日、中国の香港に対する介入をけん制するための「香港人権・民主主義法案」を可決した。関係者の話では、トランプ大統領が数日中に法案に署名する見通しだ。
香港では民主化や自治を要求する人々の抗議活動が5カ月余りも続いており、足元では騒乱がエスカレートしているため、中国政府が鎮圧に向けてより強硬な手段を講じるのではないかとの懸念が出ている。
こうした中で香港人権・民主主義法案は、米国が香港に特別な地位を付与し続けるべきかどうかを「一国二制度」が保証される度合いと結びつける意味合いがある。同時に米下院では、デモ隊に対して使われる催涙ガスやゴム弾などの香港への輸出を禁止する法案も承認された。
次はどうなる
これら2つの法案が米議会の上院と下院を通過し、ホワイトハウスに送られた。事情に詳しい複数の関係者は、トランプ氏が署名するとみている。
トランプ氏は拒否権を行使しない限り、10日以内に署名することが求められる。拒否権が発動されると、上下両院それぞれの3分の2が賛成した場合のみこれを覆すことができる。上院のウェブサイトによると、トランプ氏は就任以来6回、拒否権を行使した。
正式に法令化されれば、国務省が少なくとも年1回、米国が香港に通商上の優遇措置を与えるのが妥当なほど香港の自治が維持されているかどうかを確認する。香港で起きた人権侵害の責任者には、米国への入国禁止や資産凍結などの制裁が科せられる。
この法案は象徴的との見方が多いものの、施行されれば米国と香港の関係を一変させ、香港が中国本土の都市と同じ扱いになる可能性も秘めている。
最も重要な問題は中国が1997年に英国から香港を返還された際に、50年間にわたって香港に「非常に高度な自治」を認めると約束したことだ。米国はこれに基づき、香港に特別な地位を付与した92年の法律を維持している。だが抗議をしている人々の主張では、香港の自由はじわじわと損なわれている。