最新記事

異常気象

地球温暖化による気候変動、世界各地で災害誘発 長期的な健康被害も

2019年11月18日(月)15時11分

イタリア北部で「水の都」ベネチアが異常な高潮に襲われ、オーストラリアでは森林火災が猛威を振るい、中国でまれな病気である肺ペストが発生するなど、このところ世界各地で大規模災害た相次いでいる。写真は11月12日、ベネチアのサンマルコ広場で撮影(2019年 ロイター/Manuel Silvestri)

イタリア北部で「水の都」ベネチアが異常な高潮に襲われ、オーストラリアでは森林火災が猛威を振るい、中国でまれな病気である肺ペストが発生した。世界各地で気候変動に起因する災害が相次いでいる。研究者は地球温暖化がさまざまな形で人々の生活をむしばみ、生涯にわたる健康被害が将来の世代に引き継がれる恐れがあると警鐘を鳴らしている。

ベネチアを壊す高潮の脅威

ベネチアは「破局的な」高潮で歴史的寺院が水浸しになり、広場やほかの建造数百年の建物も水であふれた。市は13日に非常事態を宣言、ルイジ・ブロニャーロ市長はツイッターに「気候変動の結果だ」と投稿した。

水位は最大187センチと、1966年に記録した194センチ以来の水準に上昇。そのため大通りは水の急流に変わり、石の欄干は破損した。ゴンドラは船着き場にぶつかって、ばらばらになった。

観光客から高い人気を誇るベネチアで、高潮の脅威は常態化しつつある。ブロニャーロ市長は「ベネチアは崩壊寸前だ。被害額は数億ユーロの規模に達するだろう」とした。

南半球ではオーストラリアで今週、森林火災が拡大。4人が死亡し、住民は避難を余儀なくされた。2016年以降、北部ニューサウスウェールズ州と南部クイーンズランド州の一部で干ばつが相次いでいるが、気象当局は海面温度上昇による降雨パターンの変化が一因と指摘した。大気の温度もこの100年で上昇していることから、干ばつや森林火災は凶暴さを増している。

オーストラリアでは気候変動と異常気象の関連性は政争の具にされている。石炭業界の支持を受けている現政権は、温暖化ガスの排出量削減の必要性は認めつつ、環境問題の厳格な措置は景気を悪化させると主張。温暖化や海面上昇の影響を特に受けやすい太平洋の島しょ国と対立している。

世界的に見ても、気候変動問題で実行性のある対策を打てるのかという懸念は高まっている。トランプ米大統領は温暖化対策の国際ルール「パリ協定」から離脱、環境保護対策の撤廃に踏み出している。

気候変動の科学的な説明にあからさまに疑義を唱える首脳は、ブラジルのボルソナル大統領とトランプ氏だけだ。ところが米国ではカリフォルニア州が、ブラジルはアマゾンが、それぞれ深刻な森林火災に見舞われている。いずれも環境保護グループは、少なくとも原因の一端は地球温暖化だと訴えている。

来月はスペインのマドリードで国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)が開かれるが、トランプ氏とボルソナロ氏の姿勢は温暖化ガスの排出量削減に向けた世界的な取り組みに影を落としている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

暗号資産の犯罪防止へ規制強化呼びかけ、国際監視組織

ワールド

主要18カ国との貿易交渉、9月1日までに完了の見通

ワールド

トランプ氏、カナダとの貿易交渉を即時終了 デジタル

ワールド

トランプ氏、イラン核施設のIAEA査察望む 必要な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急所」とは
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 5
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 8
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 9
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 10
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中