最新記事

日韓関係

日朝戦争なら韓国は北朝鮮の味方、日本はいつの間にか四面楚歌?

If North Korea and Japan Went to War, Which One You Would Back?

2019年11月7日(木)18時24分
トム・オコナー

今夏ソウルで行われた反日集会。こじれた関係は修復できるのか Kim Hong-Ji -REUTERS

<日朝、日韓関係の悪化を狙いすましたように東シナ海や日本海で軍事演習をする中ロ、北が何度日本海にミサイルを撃っても知らないふりのアメリカ。日本に本当の味方はいるのか>

もしも北朝鮮と日本が戦争をしたら、多くの韓国人は北朝鮮側につくことが、韓国の政府系シンクタンクの世論調査で分かった。

11月6日に発表された世論調査は、韓国統一研究所のリー・サンシン研究フェローが同研究所恒例の平和フォーラム(今年で11回目)の一環として実施したもので、東アジアのパワーバランスが大きく変わりつつあるなかで、韓国の国民感情を探るために行われた。この調査で、日朝間で紛争が起きた場合、韓国人はアメリカを中心とする3国同盟のパートナーである日本ではなく、長年敵対関係にあった同胞の国に味方することが分かった。

「日朝間で戦争が起きるという極端な想定では、回答者の45.5%が北朝鮮を支援したいと答え、日本を支援すべきだと答えた人は15.1%、どちらでもないという回答は39.1%だった」と、本誌が入手した調査報告には書かれている。

リーによれば、支持政党による違いはほとんどなかった。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が推進してきた南北融和路線を考慮すれば、この結果は「さほど意外ではない」と、リーは本誌に語った。

過去70年間、韓国と北朝鮮は概ね敵対関係にあったが、20世紀前半の約35年間、日本の統治下に置かれた歴史を共有している。イデオロギー対立で南北が引き裂かれたのは、第二次大戦で連合国側が勝利し、米ソが朝鮮半島に進出してからだ。

北朝鮮は「身内の厄介者」

その後3年間続いた南北の血みどろの戦争は、休戦協定が結ばれただけで、厳密に言えばまだ終わっていない。21世紀に入って、埋めがたいとみえた南北の亀裂に橋を架ける試みが何度か行われ、今は北朝鮮の3代目の最高指導者・金正恩(キム・ジョンウン)が主導権を握る形で、北朝鮮と韓国の2国間外交はこれまでとは異なる展開を見せている。

金正恩と文在寅は南北の歴史では過去最高の3回、首脳会談を行った。加えて、金正恩は北朝鮮の指導者としては初めて、在任中のアメリカ大統領と会談した。ドナルド・トランプ米大統領との会談は3回におよび、今年6月に南北の軍事境界線上の板門店で行った電撃会談では、会談前に文在寅も合流し、3者が並んで報道陣のカメラに収まった。

北朝鮮の独裁体制と目に余る人権抑圧は今なお国際社会の批判を浴びているが、金正恩は中国の習近平(シー・チンピン)国家主席、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とも会談を行い、今や東アジア外交のキープレイヤーを自任している。とはいえ、金が知恵を絞ってきたのは、南から支援を引き出すための策略だ。政治的な亀裂が南北を切り裂いているとはいえ、元々は文化と歴史を共にする同じ民族の国。しかも、かつての敵である日本に対する反感を共有している。

「韓国人にとって、北朝鮮は身内の厄介者のような存在で、憎み、軽蔑する一方で、北朝鮮がほかの国にやられたら、守ってやらねばならない、という思いがある」と、リーは説明する。「同様に、北朝鮮は、韓国が独島(ドクド)の領有権をめぐって、日本ともめるたびに、韓国に肩入れしてきた」

<参考記事>「アメリカは韓国の味方をしない」日韓対立で米高官が圧迫
<参考記事>韓国は、日本の対韓感情が大きく悪化したことをわかっていない

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「パウエル議長よりも金利を理解」、利下げ

ワールド

一部の関税合意は数週間以内、中国とは協議していない

ワールド

今年のロシア財政赤字見通し悪化、原油価格低迷で想定

ワールド

中国、新型コロナの発生源は米国と改めて主張 米主張
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 2
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・ロマエとは「別の役割」が...専門家が驚きの発見
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中