最新記事

中国

習近平「ブロックチェーンとデジタル人民元」国家戦略の本気度

2019年11月5日(火)11時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

一、「ブロックチェーン+民生領域」での応用を模索し、ブロックチェーン技術の教育、就労、養老、精確な貧困対策、医療健康、偽造防止、食品安全、公益における応用を積極的に推し進め、人民に対して、よりスマート化された快適で優秀な公共サービスを提供する。

二、ブロックチェーンの技術サービスと新型スマートシティの建設を結合し、情報基礎施設、スマート交通、エネルギー・電力などの応用を模索し、都市管理のスマート化・精密化のレベルを高める。

三、ブロックチェーン技術で都市間の情報・資金・人材・信用情報の更なる大規模流通を促進し、生産要素のエリア内での秩序のある高効率流通を保証する。

四、ブロックチェーンの情報共有モデルを模索し、政府業務データの部門間、区画間の共通維持保守と利用を実現し、業務の協同処理を促進し、「一度行けばいい」という改革を深化させ、人民に更に良い政府業務の体験を与える。

(筆者注:外部から見れば中国は一党支配体制の中央集権的国家なのだから、さぞかしピラミッド式に命令系統や業務系統がきれいに出来上がっているだろうと見えるかもしれない。しかし実際はその逆で、中国は広大過ぎて、政府にも様々な部局があり過ぎ、地方政府と中央政府、地方政府と地方政府、また各政府内における各部門の情報流通や意思疎通が非常に悪く、公務員の仕事の効率も凄まじく悪い。たとえば、ある手続きを遂行するために、某政府部門Aの窓口に行ったとしよう。すると窓口Aは、「あ、それなら窓口Bに行け」と回答する。窓口Bに行くと、「それはCがやっている。Cに行け」とすげなく断る。それをD窓口、E窓口、F......と延々と「たらい回し」にされて、互いに責任も取らない。これが中国の様々なレベルの行政の実態だ。

そのために、中央集権的なシステムを作るのは難しいという現実がある。おまけにその間に賄賂や汚職、あるいは不正決済など何でもありだ。そこで、先ずは「一度行けば、それで済む」という業務を遂行できるだけでも、ブロックチェーン応用には意義があるのである。)

本気度、その1――国家暗号法

国家主席・中共中央総書記・中央軍事委員会主席である習近平が言った言葉なので、中国の国家戦略としての本気度に間違いはないのだが、それを裏付けるものが、次から次へと発布された。

まず国家暗号法からご説明しよう。

10月26日、第十三回全国人民代表大会(全人代)常務委員会第十四期会議が開催されて「中華人民共和国暗号法」を可決した。

便宜のため、ここでは「暗号法」と略称することにしよう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏の8日の電話会談、「非常

ワールド

ウクライナに「重大な空爆の可能性」、米大使館が警告

ビジネス

エア・カナダ、米路線の予約が10%超減少 貿易摩擦

ワールド

米・イラン、11日に第4回核協議 オマーンで
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 5
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 6
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 7
    「金ぴか時代」の王を目指すトランプの下、ホワイト…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 10
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 10
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中