最新記事

中国

習近平「ブロックチェーンとデジタル人民元」国家戦略の本気度

2019年11月5日(火)11時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

暗号法はブロックチェーンのシステム構築には欠かせないもので、その目的は暗号法第一章の「総則」に書いてある。それによれば、暗号法は国家の安全と公共の利益を守りながら、イノベーションなど暗号産業の発展を目的とし、中国共産党の指揮の下、中央政府によって管理運営される。

また暗号法では機密度の高さによって「核心暗号」、「一般暗号」および「商業用暗号」の3つのレベルに分けている。

核心暗号:国家が保護する最高レベルの機密性を持つ「絶密級=極秘レベル」
一般暗号:最高機密性レベルが「核心」の次の「機密級=機密レベル」
商業用暗号:公民、法人、その他の組織のネットワークと情報セキュリティを保護。
全部で44条もあるので詳細は省くが、第44条に「2020年1月1日から施行される」とある。本気だ。

本気度、その2――「党への忠誠」初心「ブロックチェーン」アプリ

次は「党への忠誠を誓う」という「初心」を忘れないアプリを、ブロックチェーンに填め込むという決定だ。

同じく10月26日、中国共産党新聞は「チェーン上の初心で"党建設+ブロックチェーン"を体験しよう」という記事を掲載した。そこには「チェーン上の初心」というアプリが今日アップされましたと書いてある。

何のことだか、大陸にいる中国人以外には「さっぱり分からない」に違いない。これは習近平が2017年10月18日に第十九回党大会で言い始めた「初心を忘れず 使命を心に刻み込め」という言葉から来ており、価値観の多様化に伴い、「中国共産党」を特に重要視しなくなった若者や中間所得層などに対して「党の初心」であるマルクス主義を忘れるなと思想教育をするために生み出した言葉である。

今回のアプリは、ブロックチェーンと「党の建設」を結びつけたもので、党員は自分の「初心」をこのアプリに記録し、改ざんできないブロックチェーンに保存して、未来の自分に見せる、もしくはみんなに公開することができるという仕組みだ。

このようなことで人民を統治できると考えるのも、何だか滑稽に思われるが、それに真剣になる者もいないわけではないのが、中国の現実かもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、15日にトルコで直接協議提案 ゼレンス

ビジネス

ECBは利下げ停止すべきとシュナーベル氏、インフレ

ビジネス

FRB、関税の影響が明確になるまで利下げにコミット

ワールド

インドとパキスタン、停戦合意から一夜明け小康 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王子との微笑ましい瞬間が拡散
  • 3
    「隠れ糖分」による「うつ」に要注意...男性が女性よりも気を付けなくてはならない理由とは?
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    ロシア艦船用レーダーシステム「ザスロン」に、ウク…
  • 8
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 9
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 10
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 5
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中