最新記事

アフリカ

絶望の縮図シエラレオネに希望を探し求めて

Hopelessness and Hope

2019年11月1日(金)18時10分
サム・ヒル(作家、コンサルタント)

首都フリータウンで援助機関の食料の配給を待つ母親の女性 Josephus Olu-Mamma-REUTERS

<内戦とエボラの後遺症に苦しみ、開発から取り残されたシエラレオネで、アメリカ人筆者が見た過酷過ぎる現実>

「なぜ肥だめみたいな国々からこんなに大勢やって来るんだ」。貧しい国の貧しい人々を見下した昨年のドナルド・トランプ米大統領の発言は当然猛反発を買ったが、不快な真実も含んでいる。多くの国で、特に社会経済の底辺の人々の生活はひどい。正式な定義はないが「肥だめ」とは貧しく暴力的で褐色人種がほとんどを占める国のことだろう。グアテマラ、スーダン、イエメン、ミャンマー、ニジェール、ハイチ、バングラデシュ、パキスタン......。だが彼の定義に当てはまる国のほとんどはサハラ砂漠以南のアフリカにある。

世界全体の幸福度が向上するなか、これらの国々は後れを取る一方だ。どんな対策も効果がないように思える。過去50年、先進国は途上国の公的な開発援助に3兆ドル以上を投じ、さらに人道支援や軍事支援、民間からの支援もある。にもかかわらず、いまだに大勢の人々がアメリカ南部の国境に押し寄せている。

トランプのように国境に壁を築いて途上国が自分で何とかしろと言いたくもなるが、それはできない。森林破壊、エイズ、エボラ出血熱、テロ、麻薬、ギャング、不法移民、生態系の破壊といった途上国の問題から先進国を切り離すのは不可能だ。同様に途上国も、気候変動、強制労働、有害廃棄物、性的搾取といった先進国の問題と無縁ではいられない。どんな壁でも2つの世界を隔てることはできない。

ではどうするか。国連の持続可能な開発目標(SDGs)への資金援助を増やすか。税制優遇措置で民間投資を促すか。欧米市場への優先的アクセスか。平和部隊の拡大か。

私はヨーロッパ、南太平洋、アフリカ、アメリカ大陸の数十カ国で働き、世界有数の大企業や世界銀行にも勤務した。何百人もの専門家やエグゼクティブや政府指導者と開発について話したが、援助を増やせば効果があると考える人間は1人もいなかった。

私は解決策を求めてアフリカへ向かった。西海岸の小国シエラレオネ、エボラと紛争ダイヤモンドで有名な国だ。世界の最貧国の1つで、国連の人間開発指数では189カ国中184位とハイチやイランを大きく下回る。何世紀もの間、シエラレオネは絶望の縮図となってきた。だが、経済復興のモデルになり得る国でもある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ユーロ圏GDP、異常気象で5%減の可能性 ECB幹

ワールド

中国、雇用下支えへ支援策 米との貿易摩擦長期化で対

ビジネス

米ドル、第1・四半期の世界準備通貨の構成比が低下 

ワールド

スコットランド警察、トランプ米大統領訪問に向け事前
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 5
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 6
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 7
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 8
    【クイズ】 現存する「世界最古の教育機関」はどれ?
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中