最新記事

イラン、核合意停止第4弾として1044台の遠心分離機にウランガス注入へ

2019年11月6日(水)10時57分

イランのロウハニ大統領(写真)は、2015年の核合意で定められた義務に違反する措置をさらに導入し、6日に中部フォルドゥの核関連施設で1044台の遠心分離機にガスを注入すると表明した。ニューヨークで9月撮影(2019年 ロイター/Brendan Mcdermid)

イランのロウハニ大統領は5日、2015年の核合意で定められた義務に違反する措置をさらに進め、6日から中部フォルドゥの核関連施設で1044台の遠心分離機にウランガスを注入すると表明した。

2015年核合意でイランは、フォルドゥの施設を「原子力・物理学・技術センター」に転換し、同施設の遠心分離機はアイソトープ生産などウラン濃縮以外の目的に使用することに同意していた。

核合意を離脱した米国の制裁強化で経済が疲弊するイランは、核合意の履行を停止する措置を段階的に導入している。

フォルドゥの遠心分離機はガスを注入しない場合に限り稼働が認められており、ガスを注入すれば、核合意で禁止されている同施設でのウラン濃縮が可能になる。

ロウハニ大統領は、国営テレビで生放送された演説で「核合意の履行停止第4弾の一環として、6日からフォルドゥの遠心分離機にガスを注入する」と述べた。

イランのガリブアバディ国際原子力機関(IAEA)担当大使は、同施設での六フッ化ウラン注入を6日に開始するとIAEAに通知したことを明らかにした。注入開始により、フォルドゥは核合意で認められた研究施設ではなく、稼働中の核施設となる。

イラン原子力庁のサレヒ長官は、6日からフォルドゥで濃縮度5%にウランを濃縮すると明らかにした。必要なら濃縮度20%まで引き上げることが可能だが、「現時点ではその必要性はない」と述べた。

核合意で定めた濃縮度の上限は3.67%。IAEAは7月、イランがウラン濃縮度を4.5%に高めていると指摘している。

ロウハニ大統領は英仏独に対し、核合意を存続させ、米経済制裁の打撃からイラン経済を守る措置を2カ月以内に講じるようあらためて要求した。

同大統領は「われわれが合意を完全に順守する一方で、他の署名国が順守しないということは受け入れられない」と強調。「(核合意に署名した国々が)合意を順守すれば、これらの措置は撤回することができる」とし、「イランは原油輸出や国内への資金の移動を認められるべきだ」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191112issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月6日発売号は「危ないIoT」特集。おもちゃがハッキングされる!? 室温調整器が盗聴される!? 自動車が暴走する!? ネットにつなげて外から操作できる便利なスマート家電。そのセキュリティーはここまで脆弱だった。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国のイラン産原油輸入、6月に急増 紛争前の輸送加

ワールド

トランプ氏の出生地主義見直す大統領令、米最高裁が全

ワールド

プーチン氏、ウクライナと協議継続の用意表明 交渉担

ワールド

イスラエル軍法務総監、ガザ配給所の発砲巡り戦犯調査
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急所」とは
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 5
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 6
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    中国軍事大学が特殊任務向け「蚊サイズ」ドローンを…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中