最新記事

香港

香港区議会選、民主派が全452議席の9割にあたる390議席獲得 投票率は過去最高

2019年11月25日(月)13時45分

政府への抗議活動が続く香港で24日に実施された区議会選挙は、投票率が過去最高となり、開票の初期段階で民主派が大きくリードしている。投票所で24日撮影(2019年 ロイター/Athit Perawongmetha)

政府への抗議活動が続く香港で24日に実施された区議会選挙は、投票率が過去最高となり、民主派が全議席の9割近くを獲得するという地滑り的な勝利を収めた。

今回の選挙は、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官に対する支持を示すバロメーターとみられていた。

過去最高の1104人が立候補し、452議席を争った。投票当日は、デモによる衝突などはなく、投票は混乱なく行われた。

選挙管理委員会によると、300万人近くが投票し、投票率は71%超と過去最高を記録した。前回選挙では約147万人が投票した。

現地テレビRTHKが25日に報じたところによると、民主派は全452議席のうち90%に近い390議席を獲得した。

4年前の前回選挙では、民主派の議席数は約100議席にとどまっていた。

ラム行政長官は、香港政府は区議会選の結果を尊重するとしたうえで「平和的で安全かつ秩序ある状況が続くこと」を望むと述べた。

「結果について、巷ではさまざまな解釈や分析がされているが、市民の現状や根深い社会問題に対する不満を反映するという見方がかなりある」とし、香港政府として「世論に真摯に耳を傾け、真剣に応える」方針だと述べた。

民主派候補らは今回の選挙について、デモに対する支持に等しく、林鄭氏に対する圧力が高まる可能性があるとの見方を示している。

元学生運動のリーダーで当選したトミー・チャン氏は「これが民主主義の力だ。これは民主主義の津波だ」と語った。

いくつかのデモを主催した民主派団体「民間人権陣線」のリーダー、ジミー・シャム氏や、立候補が禁止された黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏に代わって出馬したケルビン・ラム氏も当選した。

民主派候補に投票したという22歳の学生は「中国政府が要求を無視したことで全ての香港市民が立ち上がり投票した」と指摘し、「民主派の勝利は、中国政府に強力なシグナルを送る」と述べた。

民主党の党首ウー・チー・ワイ氏は「今回の選挙は、中央政府が民主的制度の要求に直面する必要があることを示す」と述べた。

一方、親中派は、何君堯(ユニウス・ホウ)氏をはじめ多くの大物議員が議席を失った。ホウ氏はフェイスブックで支持者に「異常な年の異常な選挙で異例の結果になった」と敗戦の弁を述べた。

親中派の民主建港協進連盟の党首スターリー・リー氏は、選挙での惨敗を「釈明も理由も見つけたくない」と謝罪。25日に党に辞任を申し出たが、慰留されたと明らかにした。

中国共産党の傘下にある英字新聞チャイナ・デーリーは25日の論説で、選挙がきっかけで香港が平常に戻ることを期待するとし、選挙前のここ数日、香港が比較的平穏だったことは、全ての有権者が選挙を意見表明の機会と捉えていたことを示していると指摘した。

台湾総統府は、選挙結果に「大いなる称賛と支持」を表明。「選挙には、自由と民主主義を追求する香港市民の揺ぎない意思が全面的に反映された」とした。

人権団体、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国ディレクター、ソフィー・リチャードソン氏は、選挙結果は「平和的政治参加への決意」を示したと、香港、中国両当局に「正当な抗議」に対処するよう要請。

「投票や平和的なデモを通じた政治的権利の主張を無視するのは、失敗する戦略だ」と述べた。

*内容を追加しました。

[香港 25日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191203issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マネタリーベース、国債売却増で18年ぶり減少幅 Q

ビジネス

三井物産、連結純利益予想を上方修正 LNGや金属資

ワールド

EUが排出量削減目標のさらなる後退検討、COP30

ビジネス

大林組、26年3月期業績予想を増益に修正 市場予想
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中