最新記事

高齢化社会

「おむつは赤ちゃんのもの」という認識はもうすぐ過去のものになる

2019年10月31日(木)11時58分

世界的に高齢化が進むなか、おむつを必要とする大人が新生児よりも多くなる日はそう遠くない。写真は尿漏れパッドが並ぶシカゴのグローサリーストア。10月11日撮影(2019年 ロイター/Richa Naidu)

世界的に高齢化が進むなか、おむつを必要とする大人が新生児よりも多くなる日はそう遠くない。おむつを含む失禁対策グッズを売るメーカーにとっては非常に大きなビジネスチャンスだ。

おむつを含む失禁対策グッズを売るメーカーにとっては非常に大きなビジネスチャンスだ。ただし、長年にわたって売上拡大を阻んできた顧客の羞恥心を払拭できれば、の話である。

成人用おむつや使い捨て下着、吸収パッドの市場は急速に成長している。ユーロモニターによれば昨年は前年比9%増の90億ドル(約9800億円)に達し、過去10年間で2倍に拡大した。

だが、エシティやキンバリークラークなど市場を先導するメーカー各社は、尿漏れの可能性のある成人4億人以上のうち、適切な商品を購入しているのは半数にとどまるとみている。購入を恥ずかしく思っているせいだ。

各社は、おむつやナプキンといった表現を避ける、ベビー用品のコーナーではなく制汗・制臭商品や生理用ナプキンなどに隣接したパーソナルケア用品の棚に商品を置くーーなど、さまざまな試みをしている。

また、広告を通じて、このテーマを気軽な話題にしようと努めている。

日本では、急速な高齢化に伴い、成人向け失禁対策商品の売上高が2013年前後に乳幼児用おむつの売上高を上回った。同市場で首位を走るユニチャームでは、この問題を気軽に考えられるよう、広告で「ちょいモレ」(少量の漏れの意味)というフレーズを採用した。

ユニチャームで広報を担当する渡邊仁志氏は、「我々は、若い人たちの失禁でさえ珍しいことではないと人々に知ってもらおうと努めている」と話す。

ユニチャームでは、特に軽い尿漏れの問題を抱えている人々に注目している。より活動的な生活を送れるようになり、最大の成長が見込めるからだ。こうした市場をターゲットにした同社の尿漏れを吸収するパッドや裏地の売上高は昨年8%増大した。

米国市場で首位に立つキンバリークラークは今年、35年の歴史を持つ「ディペンド」ブランドを刷新し、より薄くソフトでフィット感の良い、しかも目立たずに着用できる商品を導入した。受け入れられやすくするためだ。

この10年、顧客獲得のために様々な取り組みが試されてきた。

最初は「おむつ」という分類をやめることから始まった。高齢の顧客が「おむつ」という言葉に感じる「自分の暮らしを制御できない」という連想を解消するためだ。

それでもなおメーカー各社は、顧客に納得してもらうのに苦労している。

キンバリークラークで成人・女性向けケア商品部門を率いるフィオナ・トムリン氏は、「人は自分が失禁することがあるという事実を、愛する人、夫や兄弟姉妹に対して秘密にしている。それは多くの消費者にとって重大な秘密だが、その一方で、人生では起こりがちなことで、生理学的にみた現実だ」と語る。

メーカー各社は特に女性顧客の獲得に熱心だ。女性の場合、出産の影響もあり、男性より2倍以上も尿漏れの問題を抱える可能性が高いからである。

キンバリークラークでは、ここ数年、女優のウーピー・ゴールドバーグやカースティ・アレイを起用した明るい調子の広告キャンペーンを通じて女性消費者に直接働きかけている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

過度な為替変動に警戒、リスク監視が重要=加藤財務相

ワールド

アングル:ベトナムで対中感情が軟化、SNSの影響強

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅

ワールド

中国により厳格な姿勢を、米財務長官がIMFと世銀に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みんなそうじゃないの?」 投稿した写真が話題に
  • 4
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 5
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 7
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    インド映画はなぜ踊るのか?...『ムトゥ 踊るマハラ…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中