最新記事

東京オリンピック

東京五輪へ向けロシアのドーピング隠し?ハッカー集団が関連スポーツ機関を攻撃

Microsoft Warns Anti-Doping Organizations Against Russian Hackers

2019年10月30日(水)17時30分
ジェフリー・マーティン

昨年は7人のハッカーが反ドーピング組織の権威を失墜させようとしたとして米司法省に告発された BeeBright/iStock.

<「ストロンチウム」と名乗るロシアのハッカー集団がスポーツ組織や反ドーピング機関を攻撃、とマイクロソフトが警告>

マイクロソフトによれば、東京で開催される2020年夏季五輪に向けて、「ストロンチウム」と呼ばれるロシアのハッカー集団が、スポーツ組織や反ドーピング機関に対するハッカー攻撃を仕掛けているという。

「ファンシー・ベア」や「APT28」の名でも知られるストロンチウムは、しばしば偽のマイクロソフトのドメインを使って攻撃を実行する。このハッカー集団は、信頼できる差出人から来たように見せかけた偽造メールを送信する「スピアフィッシング」のほか、パスワード・スプレー攻撃(多数の同じパスワードを使って複数アカウントへの侵入を試みる手法)や、ファームウェア脆弱性の悪用、マルウェアの拡散などの手法を使う。

「なかには成功した攻撃もあるが、大多数は失敗に終わっている」とマイクロソフトは述べている。「マイクロソフトはすでに、こうした攻撃の標的になったすべての顧客に通知し、攻撃にさらされたアカウントやシステムのセキュリティ確保に関して、支援を求める顧客に協力している」

3大陸の16組織に及んだこのサイバー攻撃は、9月16日に始まった。世界ドーピング防止機構(WADA)が、すべての主要スポーツ大会へのロシア選手の出場禁止を検討すると発表した後のことだ。出場禁止の対象になる大会には、2020年夏季五輪のほか、2022年FIFAワールドカップも含まれる可能性がある。

<参考記事>出場停止勧告を受けたロシア陸上界の果てしない腐敗
<参考記事>韓国で広がる東京五輪不参加を求める声、それを牽制する韓国政府

ロシア選手また出場停止の恐れ

ロシアが組織ぐるみのドーピングを行い、自国選手の尿検体を操作していたことが明るみに出たのは、2016年のことだ。パフォーマンス向上薬物検査で陽性を示した検体が、WADAの報告書が「陽性消失手法」と呼ぶ手口のもとで消されていたのだ。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長はこの不正について、「スポーツとオリンピックの高潔さに対する前例のない攻撃」と表現した。

3年にわたる出場資格停止処分を経て、ロシアは自国選手に関する新データを再提出した。だが、WADAは提出データに多くの矛盾があると判断した。

「データが消去された形跡がある」。WADAのコンプライアンス審査委員会のジョナサン・テイラー委員長はそう述べている。「まだ仮定の話だが、専門家の現在の見解が変わらないようなら、コンプライアンス審査委員会は『コンプライアンス違反』と断定し、相応の処分を求めることになるだろう」

処分には、オリンピックなどの国際大会へのロシア選手の出場禁止も含まれるかもしれない。また、ロシアでは主要なスポーツ大会の開催が認められなくなる可能性もある。

ロシアのドーピングを暴くドキュメンタリー
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独失業者数、11月は前月比1000人増 予想下回る

ワールド

東南アジアの洪水、死者241人に 救助・復旧活動急

ビジネス

ユーロ圏の消費者インフレ期待、総じて安定 ECB調

ビジネス

アングル:日銀利上げ、織り込み進めば株価影響は限定
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 8
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中