最新記事

日本社会

都心ではっきり見えてきた、経済力がなければ子を持てない格差の拡大

2019年10月30日(水)16時20分
舞田敏彦(教育社会学者)

近年、東京23区内でも特に都心の地域で出生率があがっている FatCamera/iStock.

<東京都心の出生率を地域別に比較してみると、今世紀に入ってから出生率の傾向に明らかな変化が見られる>

日本の人口動態が減少局面に入って久しいが、首都の東京では人口が増え続けている。都心部では少子化など「どこ吹く風」、子どもが増え続けて地域の学校が悲鳴を上げている。タワーマンションが増えていることなどもあって、子育て世代がどっと流れ込んでいるためだ。

これは人口の社会増だが、自然増もある。人口千人あたりの出生数(出生率)を見ると、中央区では2002年では8.5だったのが、2017年では13.1に上昇している。15年間で4.6ポイントも増えている。

隣接する千代田区と港区も、出生率の伸びが大きい。都内23区では出生率が上がっている区が多いが、減っている区もある。<表1>は、23区の出生率の動きを整理したものだ。

data191030-chart01.jpg

2002年と2017年の比較だが、出生率上位の顔ぶれが変わっている。黄色マークは上位3位で、2002年では城東エリアなどで高かったのが、17年では都心の3区に様変わりしている。中央区、港区、千代田区だ。

これらの区では出生率の伸びが大きい。一方、城東エリアの区は出生率が下降し、23区の中でも順位も下がっている。足立区は、この15年間で2位から22位へと大幅に落ちている。

一昔前は地価が安いエリアで出生率が高かったが、最近はその逆になりつつある。地域単位のデータだが、出生率と経済力がリンクする傾向すら出てきている。藤田孝典氏の名著『貧困世代』(講談社新書)の帯に「結婚・出産なんてぜいたくだ!」と書いてあったのを思い起こさせる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

オランダ政府、ネクスペリアへの管理措置を停止 対中

ワールド

ウクライナに大規模夜間攻撃、19人死亡・66人負傷

ワールド

ウクライナに大規模夜間攻撃、19人死亡・66人負傷

ワールド

中国、日本産水産物を事実上輸入停止か 高市首相発言
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中