最新記事

日本社会

都心ではっきり見えてきた、経済力がなければ子を持てない格差の拡大

2019年10月30日(水)16時20分
舞田敏彦(教育社会学者)

上記の出生率は人口ベースの粗出生率で、都心のエリアでは子育てファミリーが多いからではないか、という疑問もあるだろう。そこで、出産年齢の既婚女性ベースの出生率を計算し、上位の区に色を付けた地図にすると<図1>のようになる。資料の『国勢調査』の実施年に合わせて2000年と2015年を比較した。

data191030-chart02.jpg

精緻化した出生率で見ても、地域差の構造が変わっているのが分かる。今世紀の初頭では城東エリアで出生率が高かったが、最近では都心エリアで高くなっている。

同じ出産年齢の既婚女性であっても、子を産もうという意向が地域によって異なるようだ。そういう違いはいつの時代でもあるが、最近の特徴は、住民の経済力とリンクする傾向が強くなっていることだ。当然ではあるが、不妊治療にも費用がかかる。

以上は都内23区の傾向だが、日本全国でも経済格差の拡大によって出産と経済力の関連が強まっているのではないか。国際比較で見ても、日本は男性の経済力と子持ち率の関連が強い国でもある(拙稿「今の日本で子を持つことはぜいたくなのか?」本サイト、2018年1月11日)。2020年の『国勢調査』のデータでは、出生率が相対的に高い濃い色の地域がますます一部のエリアに凝縮されているかもしれない。

上記地図の2015年の出生率は、各区の既婚女性のフルタイム就業率とプラスの相関関係にある。夫婦二馬力で稼げることの効果があるようだ。いやそうでないと、子を持つことは難しくなっているのかもしれない。

今月から幼児教育・保育の無償化が始まったが、上記のような実態を考慮すれば、無償化より優先すべきは保育士の待遇を改善して受け入れ枠を増やすことだ。消費増税で得られた財源の使い道を誤ってはならない。

<資料:『東京都人口動態統計』
    『東京都統計年鑑』
    総務省『国勢調査』

ニュース速報

ビジネス

訂正-米FRB、社債買入制度通じた27日時点のET

ワールド

アングル:トランプ氏6人の側近、対中強硬へ足並み 

ワールド

米の香港優遇措置撤廃、「無謀で恣意的」と中国共産党

ビジネス

ルフトハンザ救済案、ドイツ政府と欧州委が暫定合意=

MAGAZINE

特集:コロナ不況に勝つ最新ミクロ経済学

2020-6・ 2号(5/26発売)

意思決定の深層心理から人間の経済行動を読み解く── コロナ不況を生き残るため最新の経済学を活用せよ

人気ランキング

  • 1

    ギター人気復活を導く「スーパークール」な和製ギター

  • 2

    ロンドンより東京の方が、新型コロナ拡大の条件は揃っているはずだった

  • 3

    ブラジルのコロナ無策は高齢者減らしのため?

  • 4

    「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がア…

  • 5

    ミネアポリスの抗議デモが暴動に......略奪から店舗…

  • 6

    ブラジル、新型コロナ感染爆発 1日で過去最多2万641…

  • 7

    【大江千里コラム】だから僕はポップスを手放した

  • 8

    東京都、新型コロナウイルス新規感染15人 2桁台で3…

  • 9

    新型コロナの死亡率はなぜか人種により異なっている

  • 10

    韓国、アイドルファンも抗議デモ 愛すればこそ、裏切…

  • 1

    過激演出で話題のドラマ、子役2人が問題行動で炎上 背景には韓国の国民性も?

  • 2

    東京都、新型コロナウイルス新規感染14人に急増 緊急事態宣言解除の目安、3項目中2項目が基準下回る

  • 3

    「イギリスが香港のために立ち上がらないことこそ危機だ」パッテン元総督

  • 4

    新型コロナの死亡率はなぜか人種により異なっている

  • 5

    「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がア…

  • 6

    ギター人気復活を導く「スーパークール」な和製ギター

  • 7

    気味が悪いくらいそっくり......新型コロナを予言し…

  • 8

    日本の「生ぬるい」新型コロナ対応がうまくいってい…

  • 9

    北朝鮮の民間経済を圧迫する独裁者の国債

  • 10

    新型コロナよりはるかに厄介なブラジル大統領

  • 1

    「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に

  • 2

    気味が悪いくらいそっくり......新型コロナを予言したウイルス映画が語ること

  • 3

    金正恩「死んだふり」の裏で進んでいた秘密作戦

  • 4

    スズメバチが生きたままカマキリに食べられる動画が…

  • 5

    過激演出で話題のドラマ、子役2人が問題行動で炎上 …

  • 6

    コロナ禍で露呈した「意識低い系」日本人

  • 7

    日本の「生ぬるい」新型コロナ対応がうまくいってい…

  • 8

    優等生シンガポールの感染者数が「東南アジア最悪」…

  • 9

    コロナ独自路線のスウェーデン、死者3000人突破に当…

  • 10

    ロックダウンは必要なかった? 「外出禁止は感染抑…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月