最新記事

ブレグジット

英議会がブレグジット法の迅速審議否決で起きる次の事態とは?

2019年10月24日(木)08時15分

英議会下院は、ジョンソン首相が欧州連合(EU)とまとめた離脱協定案の関連法案を迅速に審議する議事日程の計画を否決した。写真はロンドンの議事堂前でプラカードを掲げる離脱支持派の人々(2019年 ロイター/Simon Dawson)

英議会下院は22日、ジョンソン首相が欧州連合(EU)とまとめた離脱協定案の関連法案を迅速に審議する議事日程の計画を否決した。これでブレグジット(英のEU離脱)が10月末よりも先に延びるのはほぼ確実で、離脱が実現するかどうかも不透明になってきた。

ジョンソン氏は、離脱協定の実行に不可欠な関連法案を通常の数週間、数カ月単位ではなく、数日で審議するよう提案し、下院は反対322、賛成308で退けた。

こうなるとジョンソン氏には、ブレグジットを期限通り実行する明確な手段は存在しない。次にどのような事態が訪れるのか。

否決の主な影響

関連法案の迅速審議否決で、離脱協定案自体が無効になるわけではないが、同案が10月31日までに可決される公算は極めて乏しい。

19日には法律に基づいてジョンソン氏がEUに離脱期限の3カ月延期を申請する書簡を送ったものの、同氏は書簡に署名しておらず、延期を望まないと明言している。

ジョンソン氏は、EUが離脱延期申請に関する判断を下すまで、関連法案の審議をストップする意向も示した。

議会が新たな審議日程を定めた動議に合意すれば、審議が再開する可能性もある。

審議が再び始まっても、離脱条件の変更につながるような協定案修正の試みを政府は阻止しなければならないだろう。

議会は既に、2回目の国民投票を実施するという条件を加えたり、政府が長期にわたってEUの関税同盟にとどまることを求めるのを義務付ける、などを提案している。

対EU関係

ジョンソン氏は「EUは目下、英議会の離脱延期要請にどう答えるか決断しなければならない」と語った。

「私はEU諸国に彼らの意思を聞くつもりだ。彼らが決めるまで、法案(の審議)は保留する。われわれは離脱を遅らせるべきでないという政府の方針に変わりはない点ははっきりさせておく。政府は責任あるコースだけを進み、合意なき離脱への備えを加速させる必要がある」という。

ジョンソン氏は以前、議会に対してEUが離脱期限を来年1月31日に延期するのを認めれば、離脱協定案を放棄して総選挙の前倒しの合意取り付けを目指すと警告している。

ただ、EUがより短期の延期を承認した場合は、協定案は取り下げないと表明。これにより、EUが短期間の離脱延期を容認し、ジョンソン氏がもう少し長めの新たな審議日程を提案して英議会がより多くの審議時間を確保できる可能性がまだ残っている。

この展開は、「絶対に10月末に離脱する。できなければ死んだ方がましだ」というジョンソン氏の約束には反するが、次の選挙でブレグジット自体を達成したと言える余地はまだあるだろう。

EUが離脱延期を一切認めないと、10月末に合意なき離脱が実現してしまう。

[ロンドン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




20191029issue_cover200.jpg
※10月23日発売号は「躍進のラグビー」特集。世界が称賛した日本の大躍進が証明する、遅れてきた人気スポーツの歴史的転換点。グローバル化を迎えたラグビーの未来と課題、そして日本の快進撃の陰の立役者は――。



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中