最新記事

リスク管理

カナダのトルドー、「人種差別」報道へどう向き合って反転攻勢かけたか

2019年10月9日(水)17時36分

2日謝罪して仕切り直し

首相の航空機は9月18日のその後離陸し、ウィニペグに到着した首相一行は、同行記者団とは別のホテルに向かい、その後12時間記者団と連絡を絶つという異例の対応を取った。

側近らは、19日に予定していた教育政策についての発表のキャンセルを決断。トルドー氏は側近らに対し、直ちに選挙関係の発表に戻るのは避けたいと告げた。「『過去のことについては本当に申し訳ありませんでしたが、もっと重要なお話があります』なんて演説はしたくない」と首相が発言したと、側近の一人は振り返る。

選挙に関してならトルドー氏の記者会見は通常15─20分で終わるが、ウィニペグでは参謀らのいつもの助言に反し1時間近くも記者からの質問に答えた。

次の遊説地サスカトゥーンでは、その夜の自由党支持者らに向けた選挙の決起大会を中止し、だれでも質問できる公民館での集会に切り替えた。

選挙戦に関わる自由党関係者は「選挙の決起大会をするのは非常にまずい状況だった。彼(トルドー氏)はペナルティーボックス(アイスホッケーで反則選手が座る待機席)に入っているのだから」と解説した。

しかし2日間の謝罪を終え、反撃の準備は整った。トルドー氏はその後3日間で主要な政策を4つ相次いで打ち出した。

20日にトロントで銃規制策を発表すると、翌日には主要全国紙の一面トップが顔の黒塗り写真ではなく銃規制のニュースで飾られた。

世論調査会社ナノス・リサーチのニック・ナノス氏は、選挙までに支持率を上げる時間が残されているため、自由党は幸運だと指摘。「選挙戦の最終週にこれが起こっていたら、われわれはアンドルー・シアー(保守党党首)首相で決まりだと話していただろうね」と語った。

David Ljunggren

[オタワ(加オンタリオ州) ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




20191015issue_cover200.jpg
※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 9
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中