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怒れるエジプト市民が6年ぶりの大規模デモ

2019年10月8日(火)16時00分
タレク・ハダド

カイロの中心部で反政府のスローガンを叫ぶデモ参加者たち MOHAMED ABD EL GHANYーREUTERS

<軍関係者による腐敗告発で再び反政府を叫ぶ声が>

エジプトでは9月中旬から反政府デモが続いており、シシ大統領が「最大規模の取り締まり」を実施。わずか2週間ほどで3000人以上の市民が連行あるいは検挙、逮捕された。

元軍トップで国防相も務めたシシが2013年のクーデターで実権を握って以来、エジプトではデモや抗議活動はほとんど見られなかった。しかし、市民の怒りに火が付き、再び街頭に繰り出している。

火元は意外な所だった。軍関連の建設業者であったが、現在はスペインのバルセロナに住むエジプト人の実業家モハメド・アリが、政府と大統領の腐敗を告発する動画をSNSに投稿。生活に困窮し、社会の変化を求める市民の怒りに火を付けた。

アムネスティ・インターナショナルのフセイン・バウミは、これまでは多くの市民が、シシの強権支配を恐れるあまり立ち上がることができなかったと語る。

「エジプトでは、デモに参加することは比較的新しい行動だ。少なくとも大規模なデモは起きていなかったため、今回のことは大きな衝撃と受け止められている」と、彼は言う。

「当初の抗議活動は散発的で、北部や小さな町にまで広がるとは思われていなかった。今では、政治的関心が強くなかった人もたくさん参加している」

バウミによると、当局に連行される人数は増え続けており、そのうち少なくとも100人は未成年だという。現在、エジプトで政治犯として拘束されている人は推定で6万人を超える。

著名な人権活動家のマイノール・エルマスリーや、ジャーナリストで反政権の政治家ハレド・ダウド、政治学者のハッサン・ナフェアらも収容されている。

アムネスティのナジャ・ブーナイムは声明文でこう述べている。「シシ政権は一連の弾圧で反対意見のほんのわずかな兆候もたたきつぶし、あらゆる政権批判を黙らせようとしている」

いつか見た風景だ。

<本誌2019年10月15日号掲載>

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※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡

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