最新記事

ブレグジット

英国が合意なきEU離脱なら、金融関係は10月21日に臨戦態勢

2019年10月10日(木)09時41分

英国の欧州連合(EU)離脱を巡る混乱が、市場や金融機関に10日早く到来する恐れがある──複数のバンカーはこう話す。写真は欧州委員会前で英国のEU離脱に反対する女性。10月9日、ベルギーのブリュッセルで撮影(2019年 ロイター/Yves Herman)

英国の欧州連合(EU)離脱を巡る混乱が、市場や金融機関に10日早く到来する恐れがある──。複数のバンカーはこう話している。

ブレグジット(英のEU離脱)期日は31日。先月議会で可決された法律に基づくと、17日のEU首脳会議で英政府が離脱協定に合意できない場合、ジョンソン首相は19日までに離脱延期を要請することが義務付けられている。一方、ジョンソン氏が先週発表した新たな提案は、EU側から受け入れられそうになく、同氏は離脱延期はしないと明言している。

つまりジョンソン氏が19日までに離脱延期を要請するのを拒否し、合意なき離脱が最も現実的なシナリオとなった場合、その後最初の営業日となる21日に市場や投資家がこうした事態に反応することになる。

5人の銀行関係者は、21日に株価や債券価格、ポンド相場が大荒れとなる展開に対処するための緊急計画が準備されていると述べた。

各金融機関のトレーダーは24時間態勢で職場にとどまる覚悟だ。少なくとも大手の2行は上層部がブレグジットの「コントロールルーム」を立ち上げて事業を統括するつもりで、規制当局は市場動向をリアルタイムで把握し続けている。

ある国際的な銀行の幹部は「誰もが市場が開く21日朝がブレグジットの流れにおいて重要なポイントだと認識している」と警戒感をにじませた。

英国の金融サービス業にとってEUは最大の輸出市場で、合意なき離脱となれば一部の国境をまたぐ事業に支障が生じる。結局離脱延期が要請されるなら内閣は総辞職、合意なき離脱が強行されれば議会の紛糾や法廷闘争が予想され、いずれも投資家を不安にさせるだろうとの声が聞かれた。

市場はなお平穏

ポンドは依然としてほぼ最近の取引レンジにとどまっており、市場は合意なき離脱が起きる確率をまだ50%未満と見込んでいる。ブレグジットに先立って総選挙が実施されるとの予想も支配的だ。

またオプション市場に今のところパニックの気配は見えず、予想変動率は落ち着いている。

それでも別の国際的な銀行の関係者は、21日から離脱期限の31日までの不安定な市場環境を何とか切り抜けるための詳細な計画が進行中だと説明した。

21日は英国の多くの学校で秋休みが始まるため、各銀行は社員に旅行や休暇について状況を良く考えて申請するよう促している。

この関係者は「われわれは強硬離脱シナリオへの備えを続けており、それはトレーディング部門にいつも以上の社員が必要なことを意味するかもしれない」と語った。

[ロンドン 9日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




20191015issue_cover200.jpg
※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領府長官が辞任、和平交渉を主導 汚職

ビジネス

米株式ファンド、6週ぶり売り越し

ビジネス

独インフレ率、11月は前年比2.6%上昇 2月以来

ワールド

外為・株式先物などの取引が再開、CMEで11時間超
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 10
    筋肉の「強さ」は分解から始まる...自重トレーニング…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中