最新記事

移民

米移民当局はメキシコの麻薬カルテルに難民申請者を引き渡している?

Man Denied US Entry by Trump Administration Kidnapped 5 Hours After Return

2019年9月17日(火)15時04分
ベンジャミン・フィアナウ

米税関・国境取締局のマーク・モーガン局長代行は、祖国での暴力から逃れてアメリカに難民申請をした移民をメキシコで待機させるこの措置を擁護する。モーガンら国境当局は、トランプ方式の待機措置の導入後、国境地帯の逮捕者が8月までの4カ月で6万6000人減ったと主張している。

「待機措置には、アメリカの人権法の濫用や嘘の難民申請を阻止する効果がある」と、モーガンは9月9日にホワイトハウスで行った記者会見で語った。

だが移民政策に抗議する活動家や専門家の意見は異なる。彼らは、トランプ政権の移民政策が合法的な移住を阻止し、難民申請のプロセスそのものを損なっていると批判する。

テキサス大学エルパソ校のジェレミー・スラック教授(移住問題を研究)は、「待機措置は国境の壁よりはるかに大きな威力を発揮している」と語った。「これが事実上、合法的な移住を妨げているからだ。それこそが、トランプの狙いだ」

問題を見えないところに追いやる格好の手段

バイスによれば、デービッド親子は最終的に、家族が1万5000ドルを超える身代金を支払って解放された。難民申請の審査待ちであることを証明する書類は全てカルテルに盗まれたため、デービッドは今後アメリカで行われる裁判所の聴聞には出席できなくなってしまったという。

「待機措置によって、トランプは移民が直面している人道的な大惨事を見えないところに追いやることができる」と、アメリカ移民評議会の政策アナリスト、アーロン・ライリヒンメルニックはバイスに語った。「アメリカは難民申請者をメキシコに送り返し、『死なないといいね。バイバイ』と言っているのだ」

トランプは5月にフロリダ州で開いた、20年の大統領選に向けた選挙集会で、支持者にヒスパニック系の「侵略」について警告。この中で、難民希望者の入国を阻止するには彼らを銃で撃てばいいとジョークを飛ばした。「彼らはアメリカの国境地帯で、グアテマラやホンジュラス、エルサルバドルの旗を掲げようとしている」とトランプは言った。「だがそれはやめておいた方がいい」

(翻訳:森美歩)

190924cover-thum.jpg※9月24日号(9月18日発売)は、「日本と韓国:悪いのはどちらか」特集。終わりなき争いを続ける日本と韓国――。コロンビア大学のキャロル・グラック教授(歴史学)が過去を政治の道具にする「記憶の政治」の愚を論じ、日本で生まれ育った元「朝鮮」籍の映画監督、ヤン ヨンヒは「私にとって韓国は長年『最も遠い国』だった」と題するルポを寄稿。泥沼の関係に陥った本当の原因とその「出口」を考える特集です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:アフリカ地域決済システムが前進、課題は「

ワールド

アングル:飛行機恐怖症広がるインド、墜落事故に深刻

ワールド

米上院共和党、EVの新車税額控除を9月末に廃止する

ワールド

米上院、大統領の対イラン軍事力行使権限を制限する法
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影してみると...意外な正体に、悲しみと称賛が広がる
  • 3
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急所」とは
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    キャサリン妃の「大人キュート」18選...ファッション…
  • 7
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 10
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 6
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中