最新記事

アメリカ政治

アメリカが逃れられない9.11のトラウマ

We Still Can’t Move Past 9/11 Politics

2019年9月19日(木)19時00分
ジョシュア・キーティング

米兵は対テロの名の下に各地で戦ってきた(2001年、アフガニスタン) UNIVERSAL HISTORY ARCHIVE/GETTY IMAGES

<同時多発テロの惨劇から18年を経た今、イスラム過激派による攻撃は大きく減ったがアメリカはいまだに「対テロ」に支配されている>

「アメリカに対する9.11級のテロ攻撃の再発を防ぐために、ご自分ならジョージ・W・ブッシュ大統領よりいい対策が取れると思いますか」

これは、2004年の米大統領選に向けた初の候補者討論会で、民主党のジョン・ケリー候補に司会者が投げ掛けた最初の質問だ。9.11同時多発テロ後初めての大統領選だったこのときから、2020年の大統領選に向けて始まった選挙戦に至るまで、対テロ戦争はアメリカ政治に影響を及ぼし続けている。

ケリーはこの質問に、自分ならブッシュよりうまくアメリカをテロから守れると答え、兵役や外交面での経験を強調した。だが、有権者は納得しなかった。イラク戦争に関する発言にぶれが見られたり、9.11テロの首謀者とみられるウサマ・ビンラディンが投票日直前に新たなテロを警告したことが響いて、ケリーは大統領選に敗れた。

9.11の余波は、その後の大統領選にも及んだ。2008年の選挙では、イラク戦争に反対していたことがバラク・オバマを大統領の座に据える大きな要因となった。オバマは2012年の選挙でも勝利したが、選挙戦では米軍のイラク撤退やリビア東部ベンガジの米領事館襲撃への対応を共和党から厳しく批判された。

2016年の選挙の前には中東でテロ組織ISIS(自称イスラム国)が台頭し、カリフォルニア州サンバーナディーノやフロリダ州オーランド、あるいはパリでイスラム過激派によるテロが発生した。ドナルド・トランプはISISを「爆撃して壊滅」させ、イスラム教徒のアメリカへの入国を禁止するという公約を掲げて大統領に選出された。

脅威は国外から国内へ

9.11テロ18周年を迎えた翌日の9月12日。来年の大統領選に向けた民主党候補者のテレビ討論会が行われた。

直前の世論調査では、ジョー・バイデン前副大統領が支持率でトップを維持。だがバイデンはイラク戦争に賛成票を投じたことがあり、しかもその過去についての説明が微妙に変わってきた点について批判を浴びている。12日の討論会でバイデンは「賛成票を投じるべきではなかった」と改めて語った。

こうしたなか、トランプと彼の支持者らは2人のイスラム教徒の民主党下院議員に対する集中攻撃を続けている。最近トランプがリツイートした投稿の1つにあるように、今回の大統領選を「ISIS」と「アメリカを再び偉大にする」の「二択」にするのが、その狙いだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、インドの原油購入停止「承知せず」 米印合意

ワールド

ロシア、ウクライナのエネ施設に集中攻撃 新たな3カ

ワールド

焦点:外為特会、減税財源化に3つのハードル 「ほく

ワールド

スペイン、16歳未満のソーシャルメディア利用禁止へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 8
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 9
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 10
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 7
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 8
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 9
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 10
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中