最新記事

東南アジア

インドネシアでパプア人がデモ、一部で暴徒化 警察による差別発言に一斉反発

2019年8月20日(火)19時23分
大塚智彦(PanAsiaNews)

独立派との対立続くパプアの事情

こうした警察の行動の背景にはパプア州、西パプア州で続くインドネシアからの分離独立を求める武装組織と軍・警察との間で最近高まっている緊張関係があるとみられている。

2018年12月2日にパプア州中部山岳地帯のンドゥガ県イギ郡でパプア縦断道路建設に従事していた州外からの出稼ぎ労働者19人が武装集団の襲撃を受けて殺害される事件が起きた。さらに2019年3月7日には同じイギ郡で移動中の軍部隊が待ち伏せ攻撃を受け、兵士3人、襲撃側7人が死亡する事件も発生し、政府は治安維持目的で兵士600人を急派して武装集団の捜索と治安維持に当たる状態が現在も続いている。

パプア州山間部では自由な取材が認められておらず、人権団体「アムネスティ・インターナショナル」などの情報では軍による「武装集団捜索目的」の放火、暴力行為などの人権侵害が深刻化し、多数の住民が難を逃れて山間部で不自由な難民生活を余儀なくされているという。

警察がパプア問題に神経質なのは8月12日に同州プンチャック県ウシル村で移動中の警察官が正体不明の男たちに誘拐され、約6時間後に射殺遺体で発見される事件が起きたことも原因といわれる。警察は軍と協力して犯行グループの捜索を続けているが、警察内部での「反パプア感情」はこれまでになく激しく、こうした空気がスラバヤでの身柄拘束時の差別発言に繋がったとみられているのだ。

パプア州、西パプアの人びとはニューギニア高地人あるいはメラネシア系で1961年にオランダ植民地支配から独立をしたものの、直後にインドネシアが軍事侵攻。1969年に住民投票でインドネシア併合が決まったとされるが、同投票でのインドネシアによる不正が指摘され、現在に至るまで武装組織「自由パプア運動(OPM)」とその分派による武装闘争が細々とだが続いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

ロイターネクスト:為替介入はまれな状況でのみ容認=

ビジネス

ECB、適時かつ小幅な利下げ必要=イタリア中銀総裁

ビジネス

トヨタ、米インディアナ工場に14億ドル投資 EV生
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中