最新記事

中東

英領ジブラルタル、イランタンカー解放決定 米は拘束延長を要請

2019年8月16日(金)08時43分

英領ジブラルタルは15日、イランの石油タンカー「グレース1」(写真)の解放を決めた。イランが拿捕(だほ)した英船籍タンカー解放の可能性に道を開いた。ジブラルタルで撮影(2019年 ロイター/JON NAZCA)

英領ジブラルタルは15日、7月に拿捕(だほ)したイランの石油タンカー「グレース1」の解放を決めた。ただ、米国が土壇場でタンカー拘束の延長を求めたため、出港がいつになるかは不明なままだ。

英海兵隊は7月4日、欧州連合(EU)の制裁に違反してシリアに原油を輸送していた疑いでグレース1をジブラルタル沖で拿捕していた。

一方、イランは同19日、英船籍の石油タンカー「ステナ・インペロ」を拿捕したと発表。報復措置の可能性が取り沙汰された。

ジブラルタルのピカルド自治政府首相は、イラン側がシリアで石油210万バレルを陸揚げしないと書面で公式に伝えてきたことを受け、拿捕命令の解除を決めた。

ただ、ジブラルタル当局は、米国の法的要請を受け、タンカーを引き続き拘束することになるかどうかは明らかにしていない。

ピカルド氏は「米司法省から、タンカー拘束に関する新たな法的手続きを始めるべきだとの要請があった」と説明。外国との共助条約を担当する独立機関が法的手続きを始めるかどうかについて「客観的な法的判断を下すことになる」と述べた。

米国務省は、グレース1がイランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊」を支援していると米政権が結論付けたと説明。米政府は革命防衛隊を「テロ組織」に指定している。国務省は「グレース1に関しても、革命防衛隊に物質的支援を行う団体・人物に関する従来の方針に沿ってわれわれは行動する」とした。

一方、イランはグレース1が間もなくジブラルタルを出発するとの認識を示し、ザリフ外相は解放を防ごうとする米国の動きは「海賊行為」だと非難。在ロンドンのイラン大使は「米国は土壇場で必死に解放阻止を図ったが惨敗した」とツイッターに投稿した。

イラン港湾海事局の高官はグレース1の行き先について、同船保有者の話として「地中海の港に向かう」と半国営メフル通信に説明。保有者は明らかにしなかった。

*内容を追加しました。

[ロンドン/ジブラルタル 15日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240423issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月23日号(4月16日発売)は「老人極貧社会 韓国」特集。老人貧困率は先進国最悪。過酷バイトに食料配給……繫栄から取り残され困窮する高齢者は日本の未来の姿

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、新たな対イラン制裁発表 イスラエルへの攻撃受け

ワールド

イラン司令官、核の原則見直し示唆 イスラエル反撃を

ワールド

ロシア、5─8年でNATO攻撃の準備整う公算=ドイ

ビジネス

4月米フィラデルフィア連銀業況指数、15.5に大幅
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 4

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲…

  • 7

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 8

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 9

    インド政府による超法規的な「テロリスト」殺害がパ…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中