最新記事

違法建築

一部屋を上下2部屋に違法改築、住人は立てずに生活(NY)

NYC Landlord Accused of Dividing Apartment Horizontally

2019年8月20日(火)17時50分
ダニエル・アベリー

その改造アパートは天井が低くて住人は膝をついて歩いていた NYC Department of Buildings

<貸すほうも貸すほうなら、借りるほうも借りるほう。しかも、アパートのトンデモ改造はこれだけではなかった>

ニューヨーク・マンハッタンのロウアー・イーストサイドにあるアパートの所有者が、一つの部屋を上下2階に分ける違法改築をしていたことが発覚した。報道によると、所有者は壁を追加して部屋を仕切るのではなく、「天井を追加」して立つこともままならない上下階に分けていたという。

天井の高さはわずか4.5フィート(約137センチメートル)。部屋を借りていた9人の住人は、身をかがめるか、膝をついて歩いていた。天井の配管に住人が頭をぶつけないよう、気泡シートを張っていたともいわれる。

ニューヨーク市建築局は8月17日、ヘンリー・ストリート165番地にあるアパートの701号室の登録所有者ジン・ヤー・リンに対し、10件の違反を通告した。ニューヨーク・ポスト紙によると、ジンがそのユニットを購入したのは2015年9月。購入時にいくら支払ったかは不明だが、住宅ローンの残高はわずか9622ドルだったという。

<参考記事>「家賃はセックスで」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

まるでフィクション

天井の低い部屋と聞くと、映画『マルコヴィッチの穴』(7階と8階の間にある「7と2分の1階」の天井の低い部屋で働く主人公が、俳優ジョン・マルコヴィッチの頭のなかに入り込むという奇想天外な物語)を思い浮かべるが、ヘンリー・ストリート165番街のアパートを2階建てに改造していたのはジンだけではない。8月16日には、601号室を所有するシュエ・ピン・ニーも違反の通告を受けていた。広さ約59平方メートルの部屋を11室に分割し、寝泊りだけに使わせていたところ、ニューヨーク市のホットラインに苦情が寄せられて発覚した。電気配線や構造、配管を勝手に改造したとして、14万4000ドル以上の罰金を課された。スプリンクラーも未設置だった。

<参考記事>人権侵害!? ホームレスや障がい者を締め出す不寛容な公衆トイレに批判

ニューヨーク市議会議員ベン・カロスはこうしたアパート改造について、「フィクションならおもしろいが、現実としてはぞっとする話だ」と述べた。

ニューヨーク・ポストによると、シュエの間借り人たちは8月16日遅くに退去した。そのうちの1人は同紙に対し、1カ月の家賃は600ドルだったと語った。比較のために言えば、6階に住む別の女性は、1ベッドルームの部屋が月2800ドルだと証言した。

「すべてのニューヨーカーは安全で合法的に暮らす権利がある」と、市建築局のアンドリュー・ラダンスキーは言う。今回のような違法建築は「住人にとってだけでなく、隣近所にとっても非常に危険だ」。

そこに住みたがる人間がいたことも問題だ。

(翻訳:ガリレオ)

20190827issue_cover200.jpg
※8月27日号(8月20日発売)は、「香港の出口」特集。終わりの見えないデモと警察の「暴力」――「中国軍介入」以外の結末はないのか。香港版天安門事件となる可能性から、武力鎮圧となったらその後に起こること、習近平直属・武装警察部隊の正体まで。また、デモ隊は暴徒なのか英雄なのかを、デモ現場のルポから描きます。


ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円一時10カ月ぶり安値、片山財務相の

ワールド

イスラエルがガザ空爆、25人死亡 停戦違反巡る応酬

ワールド

米・サウジ、2700億ドル規模の新ビジネス契約=ト

ビジネス

エヌビディア、第4四半期売上高見通しが予想上回る 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 7
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 8
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中