最新記事

トラベル

ベネチアの新「迷惑防止条例」に要注意、外でコーヒーを淹れたら市外追放?

German Tourists Instructed To Leave Venice Over Cups of Coffee

2019年7月22日(月)16時30分
ドニカ・ファイファー

2015年、修復中だったリアルト橋。ベネチアきっての名所でいつも込み合っている Manuel Silvestri-REUTERS

<観光の大衆化でマナー違反に耐えかねたイタリア各都市では、住民の生活を守ることを優先し、観光客の行動を厳しく規制し始めている>

ベネチアの歴史ある橋、リアルト橋のたもとでコーヒーを淹れていたドイツ人バックパッカー2人が7月19日、警察に通報され、市外への退去を要請された。

その上、950ユーロ(1,050ドル)の罰金も科された。古い白大理石の橋でコーヒーを淹れる行為が、今年5月に制定されたベネチア版の迷惑防止条例に違反していたためだ。

ベネチアは年に約3000万人もの観光客が訪れる国際的な観光地だが、約5万人の住人の生活の場でもある。マスツーリズム(観光旅行の大衆化)による悪影響から市民を守り、公序良俗を維持する仕組みが必要だった。

この新条例は、公共の場で上半身裸になることや、特定の場所でのピクニック、噴水での水浴びや運河への飛び込みの禁止などを定めている。違反した場合は、地元警察に罰金を徴収される。

バックパッカーが旅行用コンロでコーヒーを淹れていたリアルト橋は、大運河に架かる最も古い橋でベネチア有数の名所のひとつ。数年前に数百万ドルをかけた修復工事が行われたばかりだ。

「ベネチアは敬意をもって扱われなくてはならない」と、ベネチアのルイージ・ブルニャーロ市長は声明を出した。「好き勝手に振る舞うことができると思ってこの町にやってくる無作法な旅行者は、地元警察に捕まり、罰金を科され、追い出される可能性がある」

条例違反に基づいて退去を要請した旅行者は、身元を出身国の大使館や領事館に通知する、とも述べた。

他の都市でも罰則規定

ベネチアのバックパッカーの事件の数日前、アドリア海に面したイタリアの観光都市トリエステ市内でも同じような事件が起きていた。2本の木の間にハンモックを吊るしたオーストリア人観光客が、300ユーロ(340ドル)の罰金を科されたのだ。トリエステには植生にものを取り付けることを禁止する条例がある。

ドイツの国際放送ドイチュ・ウェレによると、トリエステ市当局は、この52歳の男性が地元住民に迷惑をかけたと発表した。

「オーストリア人男性は、トリエステの海岸沿いにある歩行者用通路の一部をブロックする形でハンモックを設置した。そこは人々が散歩を楽しむ遊歩道になっている。そんな場所にハンモックをかけて昼寝をしていたのだ」と、警察の広報担当者は報道陣に語った。

男性は地元住民から注意されてもハンモックを取り外さなかったため、警察に通報されたようだ。

「木があるからといって、歩行者のいる通りにハンモックを吊るすのは普通じゃない」と、警察の広報は語った。

(翻訳:栗原紀子)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界の石油市場、26年は大幅な供給過剰に IEA予

ワールド

米中間選挙、民主党員の方が投票に意欲的=ロイター/

ビジネス

ユーロ圏9月の鉱工業生産、予想下回る伸び 独伊は堅

ビジネス

ECB、地政学リスク過小評価に警鐘 銀行規制緩和に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 5
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 6
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 9
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 10
    【クイズ】韓国でGoogleマップが機能しない「意外な…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中