最新記事

ネット

ウソが真実を駆逐? フェイクニュースに対抗する「ファクトチェック」に限界

2019年7月22日(月)12時00分

7月11日、欧州連合(EU)は米フェイスブックなどのソーシャルメディア(SNS)に対し、「フェイク(偽)ニュース」対策の強化を迫っている。写真はダブリンのフェイスブック社内に設置された選挙対策オペレーションセンター(2019年 ロイター/Lorraine O'Sullivan)

欧州連合(EU)は米フェイスブックなどのソーシャルメディア(SNS)に対し、「フェイク(偽)ニュース」対策の強化を迫っている。しかし新たな調査によると、ファクトチェック(事実検証)体制を強化しても、誤った情報がもっとも拡散したコミュニティーにはほとんど正しい情報は届かないことが明らかになった。

この調査はビッグデータを扱うアルト・データ・アナリティクスが、5月の欧州議会選挙を前に3カ月かけて分析したもの。ファクトチェックの需要が高まっているにも関わらず、その有効性には疑問符がつくという内容となっている。

ロシアが2016年の米大統領選に影響を与えるツールとして利用したことから、フェイスブックは激しい批判にさらされてきた。これを受け、同社は2018年にファクトチェックの人員を全世界で4倍に増やし、傘下の対話アプリ「ワッツアップ」にもファクトチェックのサービスを導入した。

EUは独自のファクトチェック部門を持つが、オンラインのSNSプラットフォームに対し、対策を強化しなければ規制を課すこともありうると警告した。

ファクトチェッカーは、多くの場合、自分で設立した非営利団体か主要なメディアで働くジャーナリストだ。彼らは根拠のない情報や加工された画像、違う印象を与えるように編集された動画などを反証する記事やブログ、ツイートなどを投稿する。

しかし、フェイクニュースと闘うにあたり、それらの反証がどれだけ効果的なのかという独立調査はほとんどなかった。

アルト・データ・アナリティクスは、EU内5カ国に拠点を置く20以上のファクトチェック団体を調査した。その結果、これらの団体のオンライン上のプレゼンス(存在感)が極めて低く、去年12月から今年3月までのデータでは、ツイッター上のリツイートやリプライ、メンションによる影響力は全体の0.1-0.3%だった。

同調査によって、これまでファクトチェッカーたちがうすうす感じていたことが明確になった。つまり、彼らが発信する情報が届いているのは、教えられる必要がない人たちなのだ。

調査の結果、ドイツ・フランス・スペイン・イタリア・ポーランドでジャンクニュースにもっとも接する可能性が高い層は、これらのファクトチェック団体の投稿を共有する人たちとほとんど接点がなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む

ビジネス

SOMPO、農業総合研究所にTOB 1株767円で

ワールド

中国、米国の台湾への武器売却を批判 「戦争の脅威加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中