最新記事

イラン核合意

核合意「違反」論争でイランの言い分が正しい理由

Iran Is Right

2019年7月18日(木)11時20分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

第4に、二次的制裁は核合意の精神に反するし、おそらく国際法に反する。イラン核合意は、15年7月にアメリカなど6カ国とイランが締結した6日後、安保理決議2231号によって承認されたことにより、締約国だけでなく国連加盟国全体に影響を及ぼす国際法となった。

つまりトランプ政権の二次的制裁は、アメリカの経済力(特に国際金融におけるドルの優位)を利用して、同盟国に国際法違反を強いているのに等しい。

第5に、イランの合意違反を国家安全保障上の脅威だと主張することによって、トランプ政権は皮肉にも、核合意への調印(とその遵守)が、アメリカの国家安全保障にとってプラスになると認めたことになる。

他方、トランプは核合意を「史上最悪のディール」とこき下ろしてきた。もし本気でそう言っているのなら、イランがそれを遵守していないことを問題視するのはおかしな話だ。史上最悪のディールを遵守すれば、史上最悪の事態になりかねないはずではないか。

トランプの元国家安全保障チーム(ジェームズ・マティス前国防長官、レックス・ティラーソン前国務長官、そしてH.R.マクマスター前国家安全保障担当大統領補佐官)は、総合的に見て核合意はアメリカの安全保障にとってプラスになるから、維持するべきだとトランプに進言した。イランに大きな不信感を抱くイスラエルなど、アメリカの同盟国の首脳や軍と情報関係者も同じ考えだった。

第6に、確かにイランはこの2週間、核合意の条件に反する措置を取ってきたが、それが直ちにイランを核爆弾製造に大きく近づけるものではない。

核合意は、イランが行えるウラン濃縮レベルを3.67%に制限している。これに対して「兵器級」ウランの濃度は90%以上と定義される。現時点では、イランがウラン濃縮レベルを20%に引き上げるのにも、まだ長い時間がかかるだろう。

イランが核爆弾を製造するのに必要な量の核燃料を確保するのも、時間がかかる。イランは核合意締結時に、低濃縮ウランの98%をロシアに移送し、ウラン濃縮用の遠心分離機の3分の2を解体し、西部アラクの重水炉をセメントで固めてしまったからだ。

イラン側の見込み違いも

つまり、イランに再び核合意を遵守させる時間はある。ただしそのためには、アメリカも核合意に復帰し、その条件を遵守する必要がある。

だが、現在のアメリカとイランは危険なゲームをしている。トランプは「最大限の圧力」をかければ、「よりよいディール」を結ぶための交渉にイランを引っ張り出せると思ったようだ。しかしこの作戦は、かえってイランの態度を硬化させた。トランプの現在の安全保障チーム、とりわけマイク・ポンペオ国務長官とジョン・ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官が、実は新しいディールではなく、イランの体制転換を実現したがっているせいもあるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

透析・手術用の品目、「安定供給図る体制立ち上げた」

ワールド

トランプ氏、NATOへの関与に否定的発言 集団防衛

ワールド

北朝鮮が固体燃料エンジンの地上燃焼実験、金総書記が

ワールド

ウクライナ大統領がUAE・カタール訪問、防衛協力で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のSNS動画が拡散、動物園で一体何が?
  • 4
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    カタール首相、偶然のカメラアングルのせいで「魔法…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 8
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中