最新記事

日本政治

参院選、女性候補者の割合は過去最高も28%止まり 女性が政治参加するためのハードルとは

2019年7月16日(火)14時15分

高いハードル

今回の参院選でほぼ男女同数の立候補者を擁立した立憲民主党の枝野幸男代表は、ロイターの取材で、女性議員が少ない背景について「女性が選挙に出た時に、夫が自分の仕事との兼ね合いで妻の選挙を手伝えないなどの障害があり、女性のほうがハードルが高い。まして子育て世代だと、育児の負担を多く担っているため、コストが大きいことは間違いない」と述べた。

同代表は国会に女性議員が増えれば、子育ての負担など当事者的な観点からの声が強まるとし「今回結果を出せれば、次につながっていく」と述べた。

上智大学法学部の三浦まり教授は、自民党の女性議員が特に少ない背景について、現職議員を優先的に公認する傾向があり、女性候補が公認されにくいと分析する。

そのうえで「安倍晋三首相は『女性が輝く』社会と言っているが、議員の男女比を均等にすることに関心があるのではなく、単に人口減少からくる労働力不足を、女性の労働力で埋めようとしているに過ぎない」と指摘した。

猪口邦子参院議員は、2005年の衆院選で初当選したが、当時の小泉純一郎首相が衆院の比例ブロックで名簿のトップを全て女性にするという女性優遇措置をとったため、多数の女性議員が当選したことを評価。「制度的な対応をしないと、なかなか女性議員は増えない」と述べた。

家庭、仕事、加えて選挙

打越候補は新潟に住居を移したが、出馬を決める前まで住んでいた東京に、夫と10代の息子を残し、家族と離れて選挙を戦っている。

今年前半の統一地方選挙で、新潟県議会議員選に出馬し敗れた磯貝潤子氏は、現在打越候補の選挙戦を手伝っている。自身の選挙について「洋服のボタンが取れたままになっていたりして、子どもに対しては気の毒だな、という気持ちがあった」と振り返り、選挙は、男性のほうが圧倒的にやりやすい、と話す。

「30年くらい前は、男性が働いて、家庭で子どもを育てるのが女性の役目だとされた。今は共働きだが、子どもの寝かしつけまでを女性がして、さらに(外で)働くというダブルワークをしてきた。その中で、もう1つ選挙に挑戦するというわけですから」と選挙に出る困難さを語った。

世界の国会議員が参加する列国議会同盟(本部・ジュネーブ)の調査によると、2018年の各国議会(日本は衆院で比較)における女性進出の割合に関して、日本は193カ国中、165位だった。これは主要7カ国(G7)、20カ国・地域(G20)の中でいずれも最下位。前年比では順位がさらに7位下がった。

今回の参院選で女性の立候補者の割合が過去最高になったが、女性議員の割合が上昇するかどうか、その結果は21日夜に判明する。

宮崎亜巳、Linda Sieg 編集:田巻一彦

[新潟/東京 16日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ自動車対米輸出、4・5両月とも減少 トランプ

ワールド

米農場の移民労働者、トランプ氏が滞在容認 雇用主が

ワールド

ロシア海軍副司令官が死亡、クルスク州でウクライナの

ワールド

インドネシア中銀、追加利下げ実施へ 景気支援=総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中