最新記事

日中関係

トランプ不信で接近する日本と中国

China and Japan’s Pragmatic Peace

2019年7月2日(火)15時30分
J・バークシャー・ミラー

ドナルド・トランプ米大統領による対中強硬姿勢により、中国は日本に対するアプローチを考え直さなければならなくなった(6月28日、G20大阪サミットで)

<数年前にはどん底にあった日中関係が、習近平を国賓として日本に招くまでに近づいたのは、アメリカのトランプという「共通の敵」があるからだ>

日本の安倍晋三総理大臣は6月27日、大阪での20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて来日した中国の習近平国家主席と首脳会談を行った。国際的な会合に合わせてこうした首脳会談が行われるのは珍しくないが、今回の会談は特別だ。2013年に国家主席に就任した習が日本を訪れたのは、今回が初めて。会談で両首脳は、日中関係が改善に向かっていることを評価し、習が2020年春に国賓として再訪日する方向で一致した。

少なくとも要人の往来という点では、両国の関係は改善基調にある。2018年5月に中国の李克強首相が来日したのに続き、10月には安倍が中国を公式訪問している。李の来日時には、社会保障から新興国での民間経済協力に至るまでの幅広い問題について、日中間で覚書が交わされた。中国との間に再び実利重視の関係を築くことが重要という考えから、安倍は李の北海道訪問にまで同行してもてなした。

<参考記事>天安門事件30周年や香港デモに無言の日本――「中国への忖度」か?

日中間で何が変わったのか

わずか数年前には、日中関係はどん底の状態にあった。2010年尖閣諸島(中国名:釣魚島)の近海で中国漁船が日本の巡視船に衝突したのをきっかけに、領有権をめぐる日中の主張が対立。2012年に日本政府が尖閣諸島を国有化すると、緊張はピークに達した。上海では反日デモの参加者らが街頭で日本車を燃やして抗議し、トヨタ自動車など複数の日本企業が中国の事業所の営業を一時的に停止する事態に発展した。

<参考記事>安倍首相はよく耐えた!

では何が変わったのか。構造的に見れば、ほとんど変わっていない。日中は今も尖閣諸島(釣魚島)の領有権をめぐって対立しているし、中国の船舶(公船や漁船など)が同諸島周辺に侵入する事態も頻発している。中国軍の急速な近代化や周辺海域への進出も止まっていない。

変わったのは、米中関係が悪化したことだ。ドナルド・トランプ米大統領による対中強硬姿勢により、中国は日本に対するアプローチを考え直さなければならなくなった。中国にとって、アメリカと日本の両方と敵対的な関係を続けていくことは持続不可能だ。中国は日米との間に長期的な対立を抱えているが、両国は中国にとって最大の貿易相手国でもある。中国は日本にとって最大の貿易パートナーであり、中国にとって日本はアメリカに次ぐ2番目の輸出市場だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

26年度の超長期国債17年ぶり水準に減額、10年債

ワールド

フランス、米を非難 ブルトン元欧州委員へのビザ発給

ワールド

米東部の高齢者施設で爆発、2人死亡・20人負傷 ガ

ワールド

英BP、カストロール株式65%を投資会社に売却へ 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中