最新記事

日本社会

地方組織が人手不足に陥る理由 「4つの矛盾」が優秀人材を辞めさせる

2019年7月4日(木)16時30分
木下 斉 (まちビジネス事業家) *東洋経済オンラインから転載

地方の企業や自治体の人手不足は常に「人手不足」を嘆く。だが実はほとんどの場合「無理難題」がある。実際に人手不足を解消している地域や自治体もある BBuilder-iStock

<変化しない職場や地域に「明るい未来」はない>

地方の企業や自治体のトップの方々とお話をすると、口をそろえて「人手不足」という言葉が出てきます。実際にはどうなのでしょうか。地方の有効求人倍率はほとんどの都道府県で1.2を超えており、100人の希望者に120以上の仕事があるという状況にあります。つまり、地方のトップが言いたいことは「地方には仕事がないどころか、むしろたくさんの仕事がある。でもやってくれる人がいない」というわけです。ではなぜやりたい人がいないのか。ありていに言えば、「あまりやりたくない仕事」がたくさん残っているのです。

なぜ地方は「あまりやりたくない仕事だらけ」なのか?

これはなぜでしょうか。背景には、2つの理由があります。1つは地方の人口減少、とくに生産年齢人口(15~64歳)が大きく減っていることです。地方の人口減少の問題点は、幼年人口や高齢者人口ではなく、この生産年齢人口が急激に減っていくところにあります。これは、もはや短期的に回復できるようなレベルをとっくに超えてしまっています。こちらはマクロ要因です。

もう1つは「働き手が寄り付かない組織」になっているということです。

これは、「戦後の人手余り時代」かつ「地域間の情報格差も著しい時代」に適合した人海戦術的な仕事が残っていたり、はたまた若者や女性に不当な人事制度が残っていたりすることによるものです。要するに、マネジメント層が優位だった時代に、働き手側の立場に立っていない「身勝手な雇用モデル」が多数残っているのです。これは個別企業のミクロの要因です。

そもそも、今はインターネットも発達し、全国での求人情報に簡単にアクセスして相互評価できるようになり、圧倒的に働く側のほうが優位に立っています。地方ではこうした事態に気づいていないか、気づいていても放置しているので、「選択されない職場」が増加しているということです。

トップ層が身勝手な話を平気でしている組織や地域からは、若者がいなくなっていくのは確かです。人手不足を嘆くだけで何もしない組織のマネジメント層は、4つの「矛盾だらけの話」を平気でしています。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 

ワールド

再送-米ロ首脳、イスラエル・イラン情勢で電話会談 

ワールド

イスラエル、イランガス田にも攻撃 応酬続く 米・イ

ワールド

アングル:「暑さは人を殺す」、エネルギー補助削減で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 10
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中