最新記事

自動車

日産株主総会でルノーが「棄権」? 新体制が抱える妥協人事のリスク

2019年6月25日(火)12時30分

利益相反事案、ルノー出身取締役は決議参加せず

日産の指名委員会等設置会社への移行は、外部有識者による「ガバナンス改善特別委員会(以下、特別委)」の提言を受けて実施する。カルロス・ゴーン前会長の不正事件を受け、日産が前会長に権限が集中していた統治体制を改める必要があると判断し、特別委に統治改革案の策定を依頼した。

特別委の提言では、独立した社外取締役を、報酬委員会の委員は「全員」とし、指名と監査の両委員会の委員は「過半数」(指名委は全員がより望ましい)としている。

また、日産の主要株主で取締役などの役職経験者が「監査委員会の委員に就任することは望ましくない」とも提言している。ボロレCEOの起用はこの提言にやや抵触する譲歩を強いられた。

一方、両社の交渉に詳しい関係者によると、日産の取締役会でルノーと利益相反の恐れがある事案を扱う場合は、ルノー出身の取締役は決議に参加しないことを両社は合意しているという。紆余曲折はあったものの、最終的には「両社にとって喜ばしい、良い合意になった」と同関係者はみている。

取締役選任11人の議案では、西川社長の経営責任を問う株主の声も多く、米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)とグラスルイスも西川社長の再任には反対を推奨した。

ルノー側も「日産に配慮した経営統合案に反対する西川社長の続投は不条理だ」(ルノー関係者)としてぎりぎりまで不満をみせていたが、最終的に取締役会で全会一致で続投が決まり、株主総会でも承認される見通しだ。

提携関係を約20年続ける日産とルノーはすでに事業上の結びつきが強く「別れる」選択肢は両社とも想定していない。日産への影響力を維持し続けたいルノー。ルノーへの出資が15%に過ぎず議決権もないため、対等な資本関係に見直したい日産。今回の人事を巡る攻防で溝が深まった両社は再び歩み寄れるのか。新体制下でも両社の神経戦は続きそうだ。

白木真紀、Linda Sieg 取材協力:田実直美 編集:田巻一彦

[横浜市 25日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 ガザの叫びを聞け
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月2日号(11月26日発売)は「ガザの叫びを聞け」特集。「天井なき監獄」を生きる若者たちがつづった10年の記録[PLUS]強硬中国のトリセツ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港の高層複合住宅で大規模火災、13人死亡 逃げ遅

ビジネス

中国万科の社債急落、政府が債務再編検討を指示と報道

ワールド

ウクライナ和平近いとの判断は時期尚早=ロシア大統領

ビジネス

ドル建て業務展開のユーロ圏銀行、バッファー積み増し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中