最新記事

中東

米イラン戦争を回避する方法はある

How to Prevent an Accidental War With Iran

2019年6月1日(土)14時00分
スティーブン・サイモン(アマースト大学教授・元米国家安全保障会議シニアディレクター)、リチャード・ソコルスキー(カーネギー国際平和財団シニアフェロー)

米政権が戦争を望んでいなくても、緊張はかなり高まっており、イランはアメリカの意図が分からずに不安を募らせている。米軍はイラン軍とその代理勢力の間近に迫っていて、些細なきっかけで衝突しかねない。

米政権が戦争を引き起こすつもりだとしたら、外交的にも政治的にも軍事的にも条件闘争の場をアメリカに有利に整えた上で、アメリカが選んだタイミングと場所で始めたいはずだ。

ロシアを含む3カ国関係

戦争を回避しながら軍事的な圧力を維持するにしても、不用意な武力衝突に発展する可能性は減らさなければならない。

その方法はたくさんある。例えばシリアでは、イラン勢力への攻撃を認める米軍の交戦規則を厳格化すれば、イラン軍の指揮系統から外れた行為が意図せぬ衝突につながるリスクを小さくできる。シリア南西部で、アメリカとイランがそれぞれ支援する軍事勢力間の緩衝地帯を拡大することもできるだろう。

アメリカはロシアに対し、イランに働き掛けを続けて、シリアで米軍との接触を避けるよう強く求めるべきだ。アメリカ、ロシア、イラン3カ国の関係を築いて軍事衝突を回避することに、ロシアがどこまで関心を持っているか、探る必要がある。

イラクでの偶発的衝突を避けるには、アメリカはイラク治安部隊を仲介役として、イラン軍やイランとつながるシーア派民兵組織との間にコミュニケーション・危機管理体制を整えるべきだろう。事件発生時の暴走や激化を防ぐため、アメリカ、イラン、イラク3カ国から成る紛争解決委員会を設立してもいい。

アラビア半島と周辺で想定できる衝突のシナリオはほかにもある。例えば、イランが支援するイエメンのシーア派武装勢力ホーシー派への密輸品運搬の疑いで、米海軍がイランの民間船舶に乗り込もうとして死傷者が出るといった事態だ。16年に起きた事件のように、米海軍艦船が誤ってイランの領海に入り、米兵が拘束される懸念もある。

ホーシー派はイランが提供するミサイルやドローン(無人機)を、イエメン内戦に軍事介入するサウジアラビアの領内に飛ばしている。これによって自国の重要な資産や主要都市が被害を受けた場合、サウジアラビアはほぼ確実にイエメンでの攻撃を激化させる。イランを直接攻撃する可能性もあり、アメリカは紛争に巻き込まれるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

次期FRB議長の条件は即座の利下げ支持=トランプ大

ビジネス

食品価格上昇や円安、インフレ期待への影響を注視=日

ビジネス

グーグル、EUが独禁法調査へ AI学習のコンテンツ

ワールド

トランプ氏支持率41%に上昇、共和党員が生活費対応
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 9
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 10
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中