最新記事

北朝鮮

「文在寅はいずれ焼き肉になる」児童の詩集に見る北朝鮮のホンネ

昨年、北朝鮮は米韓との友好関係を築く姿勢を見せていたが…… The Presidential Blue House/REUTERS

<「老いぼれトランプ」「狂った犬には棒たたきのお仕置きだ」――トランプに対する罵詈雑言も>

米国のトランプ大統領は日本に続き韓国を訪れる。文在寅大統領との会談も予定されており、膠着している北朝鮮との対話をどうするかが主要な議題となるだろう。

トランプ氏の日韓歴訪に対して、北朝鮮側は今のところ反応を示していない。しかし、北朝鮮の韓国に対する態度は日増しに辛らつさを増しており、いずれ大統領訪韓にも批判的な姿勢を見せるだろう。

<参考記事:「約束も礼儀もなく無責任」北朝鮮が文在寅政権を猛批判する理由

一方、トランプ氏に対してはどうだろうか。金正恩氏は米国とは対立しているもののトランプ氏とは良好な関係を築いていると度々言及している。それだけに、トランプ氏個人に対する非難は抑えるだろう。昨年6月の米朝首脳会談前までは、互いに激しい罵倒合戦を繰り広げていた両者だが、今のところ自制している。

2月にベトナムのハノイで開催された米朝首脳会談が不発に終わったが、トランプ氏は金正恩氏との関係を損ねないよう言葉を慎重に選んでいる。それでも、日本と韓国は比較的に気軽に訪問しても、なかなか自分(金正恩氏)とは会えない状況に金正恩氏も内心イライラしているかもしれない。

金正恩氏は、表向きは米韓との関係を決定的に損なわないようにしているが、北朝鮮国内ではトランプ氏、さらには文在寅氏を厳しく非難する教育を行っているようだ。

韓国の大手紙・朝鮮日報は今月16日、同国の東亜大学教授のカン・ドンワン教授が入手した北朝鮮の内部資料について報じた。カン教授が入手したのは「祝砲星」という子どもの詩集だ。北朝鮮の青少年の思想教育を統括する金日成・金正日社会主義青年同盟直属の「金星青年出版社」から2018年に発行された詩集は約190ページで、130編の詩が収められているという。

タイトルからして北朝鮮の長距離弾道ミサイル(ICBM)や核爆弾を誇るものだが、「強盗の米帝の奴ら」「米国の地を丸ごと締め付けてやる」など、米国に対する過激な表現が目立つという。

さらにトランプ氏個人に対する直接的な罵詈雑言もあるとういのだ。「吠えるトランプ」「老いぼれトランプ」「狂った犬には棒たたきのお仕置きだ」「水素爆弾を一回食らってみるか?」などだ。

こうした表現はトランプ氏だけに向けられているのではない。文在寅氏に対しては「米国産のサプサル犬(番犬)」「死ぬことも知らずに山犬(米国)に従っている」と辛辣な表現で非難し、さらには「青瓦台の番犬は焼き肉になるだろう」など、とても子どもが創ったと思えないような内容だというのだ。

詩集が発刊されたのは2018年。北朝鮮は米韓との友好関係を築く姿勢を見せながらも、内部的には米韓はあくまでも敵国であるとの教育を行っていたことになる。

<参考記事:日米の「韓国パッシング」は予想どおりの展開

※当記事は「NKNews」からの転載記事です。

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

dailynklogo150.jpg



ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本のCEO
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月1日号(6月24日発売)は「世界が尊敬する日本のCEO」特集。不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者……その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米、中国からのレアアース輸出加速巡り合意=ホワイト

ビジネス

米ナイキ、中国生産縮小を計画 米関税で10億ドルの

ビジネス

新興国市場は「適温相場」、米資産離れで資金流入活発

ビジネス

米テスラ、マスク氏側近幹部のアフシャール氏が退社
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉仕する」ポーズ...アルバム写真に「女性蔑視」批判
  • 3
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事実...ただの迷子ですら勝手に海外の養子に
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    単なる「スシ・ビール」を超えた...「賛否分かれる」…
  • 10
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中