最新記事

自動車

フィアット・クライスラー、仏ルノーに対等合併を提案 日産とのアライアンスにも影響か

2019年5月28日(火)16時00分

5月27日、自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は、フランスのルノーに対し、対等合併を提案した。写真はイタリア・トリノで2018年7月撮影(2019年 ロイター/Massimo Pinca)

自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は、フランスのルノーに対し、対等合併を提案した。広範囲にわたる技術革新や規制強化への対応が狙い。350億ドル強の合併がまとまれば、業界の勢力図を変え、さらなる再編につながる可能性もある。

ルノーは同提案に対し、関心を抱いているとし、友好的に検討するとの見方を示した。事情に詳しい関係者2人によると、ルノーの取締役会は数日内に非公式の会合を開き、来週にもFCAとの合併手続きを進める拘束力のない合意を締結するか判断する可能性があるという。

FCAは声明で、ルノーとの統合が実現すれば、主要な地域、自動車市場、技術において強いプレゼンスを持つ、年間販売台数が870万台の自動車メーカーが誕生すると表明。また、年50億ユーロ(56億ドル)の節減になるとの見込みも示した。

「広範囲で補完的なブランド・ポートフォリオは、高級部門から主流部門まで市場を完全にカバーできる」と述べた。

合併案によると、FCAとルノーはオランダに設立する持ち株会社の下で統合。FCA株主が25億ユーロの特別配当を受け取った上で、新会社はFCAとルノーの折半出資となる。

交渉に詳しい複数の関係筋によると、新会社の会長にはFCA株29%を保有するアニェッリ家の代表ジョン・エルカン氏が、最高経営責任者(CEO)にはルノーのジャンドミニク・スナール会長が就任するとみられている。

ロイターが入手した社内メモによると、FCAのマンリーCEOはルノーとの合併には1年以上かかる可能性があるとの見方を示した。

メディオバンカのアナリストはノートで「日産が参画すると想定して3社が統合すれば年間販売が1500万台を超え、規模のメリットは明らか」と指摘した。

自動車業界では、排ガス規制が強化される中で電動化が進み、コネクテッドカー(つながる車)や自動運転などの新技術の開発競争に乗り遅れまいと再編の動きが強まっている。

FCAは「自動車業界の変革が生む好機をつかむために果敢な決断をしなければならないことも、統合の意義を深める」と説明した。

だが、FCAとルノーの統合計画には、イタリアおよびフランスの政治と雇用の問題が立ちはだかる。欧州のフィアットの工場は、大半が稼働率が50%を下回るが、フィアットは、コスト削減計画は工場閉鎖に依存しないとしている。

ルノーの筆頭株主であるフランス政府は、FCAとルノーの合併計画を原則支持するとしながらも、詳細を見極める姿勢を示した。

イタリアのサルビーニ副首相は「フィアット・クライスラーの拡大はイタリアにとって良いニュースだ」とした上で、同プランが雇用喪失につながると見込んでいないとした。

サルビーニ氏はフランス政府のルノーへの出資比率15%に関して言及しなかったが、イタリア連立政権の一翼を担う極右政党「同盟」の議員は、ルノーに出資するフランス政府と対等な立場に立つため、イタリア政府が統合新会社への出資を求める可能性があると述べた。

ミラノに上場するFCA株は19%急伸。ルノーは17%高。PSAは2.5%安。

ジェフリーズのアナリスト、Philippe Houchois氏はリポートで「FCAは、PSAと同じくらいルノーとうまくかみ合う」と述べた。

エバーコアISIのアナリスト、Arndt Ellinghorst氏は「市場は、相乗効果の数字には慎重になるだろう。自動車業界でこれまで成功した対等合併は1つもない」と指摘。新会社ではフランス、イタリア、米国が連携することになり、執行面でのリスクが意識されるとの見方を示した。

またFCAとルノーが統合すれば、ルノーと日産自動車のアライアンスにも影響を及ぼすことになる。

フランスの当局者は、雇用などを注視する方針を表明した上で、ルノーと日産のアライアンスを維持する必要があるとも主張した。

この日発表された計画によると、日産自動車は、統合後の新会社の取締役会(11人で構成)に取締役を1人指名できる。

FCAは、合併により年間で推定10億ユーロの節約が可能になり、日産と三菱自動車が恩恵を受けるとも表明した。

[ミラノ/パリ 27日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 日本人が知らない AI金融の最前線
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月3号(2月25日発売)は「日本人が知らない AI金融の最前線」特集。フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに[PLUS]広がるAIエージェント

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

デンマーク、3月24日に総選挙実施 グリーンランド

ワールド

米副大統領「物価高は民主党の責任」、激戦州ウィスコ

ワールド

米ホワイトハウス宴会場建設、地裁が差し止め請求退け

ワールド

米、対中国「恒久的最恵国待遇」取り消しの影響調査へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルーの大スキャンダルを招いた「女王の寵愛」とは
  • 4
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 5
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 6
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 7
    「まるで別人...」ジョニー・デップの激変ぶりにネッ…
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    「3列目なのにガガ様が見えない...」観客の視界を遮…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 5
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中