最新記事

ファーウェイ

ポンペオの「Huaweiは嘘つき」発言を検証する

2019年5月25日(土)19時00分
遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)

3.のAP通信の質問に対する任正非の回答:

●過去30年間にわたって、我が社は170ヵ国の30億人以上の顧客にサービスを提供してきたが、非常に良好な安全を保ち続けている。Huaweiは一つの独立したビジネス企業だ。ネット上の安全や個人情報保護に関しては絶対的に顧客の側に立つ。私たちは絶対にいかなる国のいかなる個人をも傷つけない。そもそも中国政府にはいかなる中国の企業に対してもバックドアを付けろと要求する法律はない。Huaweiも私個人もまた、ただの一度もそのような要求を中国政府から受けたことはない。

●もし国家情報法で要求されたら、私は私の会社(Huawei)をあなたに売ってもいいですよ。

●もしあなたが、とても買い取る力はないというのなら、私はHuaweiという会社を閉鎖してしまいます。顧客の利益を侵害するような事態になるのなら、私は絶対に会社を閉鎖してしまう。それだけは確かだ。

13.のCNBC記者の質問に対する任正非の回答:ここはQ(記者)&A(任正非)の形で示す。

Q:あなたは中国政府の要求があっても、絶対に従わないと言っていますが、しかしあなたは共産党員ですよね?それでも中国政府の要求を拒否できるというのですか?どうやって中国政府に抵抗できるのですか?どうやって顧客を安心させることができるのですか?

A:私の会社はビジネスの会社だ。ビジネス企業の価値観は顧客が中心だ。私個人の政治的信仰とビジネス行動は必ずしも一致しない。私は絶対に中国政府に服従して顧客を裏切るようなことはしない。今日のインタビューが報道された後の将来20年から30年、もし私がまだ生きていたとしてら、私がいま言った言葉を覚えておいてほしい。そして私が行動を以てこの言葉を証明することを見届けてほしい。

Q:アップルはアメリカ政府の要求に従わず、政府を訴えて司法に持ち込んだ。中国にはHuaweiに、このような行動を可能ならしめる法律制度があるか?

A:私は絶対に中国政府の要求を実行しない。となると中国政府が私を訴えるのであって、私が政府を訴えるということにはならない。もっとも、私は中国政府が私を訴えるか否かは分からない。

ここまでが1月15日の"Huawei's Founder Ren Zhengfei: Huawei will never provide government with customer information"
に載っていた内容の一部抜粋だ。

アンドリュー記者は、このことを指して言ったものと思う。

しかし、ポンペオは即座にHuaweiの主張は「嘘だ」と回答している。

つまり「証拠を出してくれ」とお願いしているCNBCの記者に対して、ポンペオは証拠は出さず、つまり証拠には一切触れず、ただ「Huaweiが嘘をついている」と言っているわけだ。「中国には国家情報法があるから政府の要求に応じないということなど、出来るはずがないだろう」というのが、推論の根拠の全てであるように見える。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物、25年は約20%下落 供給過剰巡る懸念で

ワールド

中国、牛肉輸入にセーフガード設定 国内産業保護狙い

ワールド

米欧ウクライナ、戦争終結に向けた対応協議 ゼレンス

ワールド

プーチン氏、ウクライナでの「勝利信じる」 新年演説
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 5
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中