最新記事

日本政治

統一地方選・前半戦は自民ペース 高まる衆参W選の思惑

2019年4月8日(月)10時39分

4年ごとの統一地方選と3年ごとの参院選が同時に行われる今年は、十二支の「亥」にちなんで永田町では「亥年選挙」の年と言われている。

自民党は12年前、24年前の参院選でともに敗北した「トラウマ」があるうえに、今回の改選議員は安倍政権への期待感が高かった2013年に当選しており、与党内にも「東北各県や三重、愛媛、長野、新潟など1人区では相当、苦戦することが予想される」(関係者)との警戒感が広がっていた。

だが足元での選挙準備の状況をみると、野党側の立ち遅れは歴然としている。参院選でカギを握る1人区で、主要野党は候補者一本化を目指しているが、本格調整は統一地方選後半戦と衆院補選が投開票される21日以降となる見通し。

また、国民民主党と自由党との合流構想も難航している。

一方、安倍政権には追い風が吹いている。4月1日に発表された新元号は、共同通信の世論調査によると、7割以上に好感を持って受け止められ、内閣支持率も52・8%と3月の前回調査比9・5ポイントの大幅増となった。

もともと自民党内では、2019年中の衆院解散が望ましいとの声が多く「衆参ダブルになると見ている声が多数」(与党幹部周辺)という情勢になりつつある。

衆院の任期は2021年で、東京五輪・パラリンピック後の景気の落ち込みが想像されやすい時期だ。

また与党内の選挙事情に詳しい関係者によると、2020年は東京五輪が開催されるため、衆院解散に踏み切るには日程的に余裕がなく、消去法的に、今年のどこかで衆院選を行う可能性について肯定的にみる声が広がっているという。

ただ、衆院解散には「大義名分」が必要との認識は、「令和」時代になっても変わらないもようだ。

一時は、北方領土問題の進展をテーマにするとの思惑が与党内にあったが、直近でのロシア側の強硬姿勢を受け、この見方は急速に後退。

与党内では、7月選挙を目前に控える参院改選組などを中心に「消費増税延期」への期待感もある。

政府・与党内には、増税延期・同日選と増税実施と同日選という複数のシナリオがささやかれている。増税実施を前提の選挙は与党に不利なようにみえるが「野党の体たらくをみれば、増税で選挙をしても勝てる」(与党関係者)とソロバンを弾く意見もあるという。

どの選択肢を選ぶかは、安倍首相の最終判断にかかっている。現時点では「4─5月の企業決算、1─3月期のGDP(国内総生産)、マーケット動向などをみて、5月中には判断するのだろう」(与党中堅幹部)との見方が与党内には多い。

安倍首相の選挙に対する直感には定評があり、世界経済や市場動向も踏まえギリギリのタイミングで判断を下すとみられる。

(竹本能文 編集:田巻一彦)

[東京 8日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和

ワールド

ロシア高官、和平案巡り米側と接触 協議継続へ=大統

ワールド

前大統領に懲役10年求刑、非常戒厳後の捜査妨害など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 7
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中