最新記事

大統領選

インドネシア大統領選、敗北認めぬ候補支持者が大規模デモ? 状況変化に日本大使館も対応後手に

2019年4月20日(土)19時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

3年前のイスラム教急進派集会は暴徒化

モナス周辺の広場はかつて24時間開放されて、立ち入りが自由なため、飲食物を販売したりする屋台や行商人、特に夜間は怪しげな人物が徘徊したり、はては野宿する人びとが多くみられた。

ところが近年は全周を柵で囲み、複数ある出入り口は警備員が管理しており、昼間は観光客なども含め自由に出入り可能だが、団体による集会、デモなどは許可が必要となっている。

現在のジャカルタ特別州のアニス・バスウェダン州知事は「どのような集会であれ合法的であれば許可する」との方針で宗教団体による集会も手続きを踏めば許可されるようになっている。

元ジャカルタ州知事による「イスラム教冒とく」事件に関連して2016年11月と12月にモナスで開催されたイスラム急進派「イスラム擁護戦線(FPI)」などが呼びかけた「州知事糾弾集会」は約10万人のイスラム教徒が集結したとされ、一部が暴徒化して警察部隊と激しく衝突したこともある。

在留邦人への迅速で的確な情報提供を

インドネシア全体では約1万9000人、ジャカルタ首都圏にはそのうち半数近くの約1万人の在留邦人が暮らしている(大使館への在留届ベース)。そうした在留邦人にとって日本大使館からのデモや集会、テロなどに関する治安情報、流行病・感染症など医療に関する情報、インドネシアの休日、長期休暇中の生活に関する情報などは安全で快適な外国生活を送る上で重要な情報源の一つとなっている。

しかし19日夕方からのモナスでの大規模集会は、同日夕方の時点で開催されていないことが確認され、集会そのものも場所が変更されて小規模で行われていた。

さらに不測の事態を想定した地元マスコミなどは規模の大きなイスラム教の宗教施設「モスク」に記者を派遣して、金曜日の礼拝を見守る態勢をとっていた。

日本大使館の説明のように「場所が変更されたがそれでもモナスに集まる可能性」「どのような行動に出るか読めない」という状況であれば、それはそれで重要な情報であり、速やかに在留邦人に連絡するべきではなかっただろうか。

大使館の注意喚起を受けて19日午後からモナス周辺に近づかないようにしていた在留邦人は多かったと思われるが、そうした邦人へも流動する情報を適宜発出することが、今後は求められるだろう。

在留邦人からは「情報は参考になるのでありがたい。結果として誤った情報となったのであれば、それはそれで止むを得ないので、出しっぱなしではなく速やかな追加情報なり訂正が必要ではないだろうか」と、誤情報は不可避であるもののその後の対応で善処を求める声が出ている。

日本大使館は20日午前11時過ぎ、「予定されていた大規模な集会は、当地治安当局に許可されず開催されませんでした」とする追加の注意喚起を発出し、事実上の訂正を在留邦人に伝えた。

インドネシアは17日の投票日が公休となり、19日の金曜日はもともと祭日であることから木曜日を休みにして21日の日曜日まで5連休を取っている人も多い。

日本大使館も19日は休館日対応だったために情報収集や追加の治安情報発出が遅れた可能性も指摘されている。

在留邦人にとって頼みの綱の一つである「大使館情報」だけに「過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」という心構えで対処してもらいたいものだと、現地に暮らす日本人の一人として思う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米のホルムズ海峡封鎖が開始期限、イラン報復示唆 原

ワールド

原油現物が最高値更新、150ドルに迫る 米のホルム

ワールド

米イラン停戦「非常に脆弱」、中国外相 対立激化への

ビジネス

エネ価格「ECB基本シナリオに依然最も近い」=クロ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ「EV撤退」が示す、日本が失った力の正体
  • 2
    「いい加減にして...」ケンダル・ジェンナーの「目のやり場に困る」姿にネット騒然
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    トランプがまた暴走?「イラン海上封鎖」の勝算
  • 7
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 8
    「違法レベル...」ゼンデイヤの「完全に透けて見える…
  • 9
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 10
    トランプ政権に逆風...「イラン戦争でインフレ再燃」…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 8
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中