最新記事

大統領選

インドネシア大統領選、敗北認めぬ候補支持者が大規模デモ? 状況変化に日本大使館も対応後手に

2019年4月20日(土)19時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

2016年には「イスラム教冒とく」事件に関連して10万人のイスラム教徒が集結した「モナス」。今回もジョコ大統領支持派とプラボウォ派の衝突が心配された。  Rinaldi - REUTERS

<現職のジョコ・ウィドド大統領の再選がほぼ確定したものの、相手候補はかつて軍の上層部にいた人物で今も高い人気を誇っており、大規模デモの報に緊張が走った──>

インドネシアのジャカルタにある日本大使館が4月18日午後3時過ぎに、インターネットを通じて在留邦人に対して出したいわゆる「注意喚起」が結果として誤りであったものの、それを外部からの指摘があるまで訂正しなかったことがわかった。

インドネシアでは4月17日に大統領選挙が投票され、複数の民間組織による「開票速報」で現職のジョコ・ウィドド大統領の再選続投が確実となっている。しかし対立候補のプラボウォ・スビアント氏は「敗色濃厚」を認めず、自陣営の独自調査で勝利しているとして「一方的な勝利宣言」を行っている。

両陣営とも選挙管理委員会の正式な開票結果が出るまで「状況を見守る」ことでは一致しているが、最終的に票が確定するのは5月22日とかなり先になる。

このため勝利を訴えるプラボウォ氏の支持者やイスラム教急進派の人びとが4月19日夕方からジャカルタ市内中心部の国立国家独立記念塔(モナス)周辺で大規模集会を開くとの情報が流れた。

これを受けて日本大使館は「4月19日夕刻、ジャカルタ中心部のモナス広場において、大統領選挙のクイックカウント(開票速報)で劣勢のプラボウォ大統領候補の支持者による大規模な集会が実施されます。同集会に関する情報にご注意いただくとともに、集会が行われる場所及びその周辺には近づかないようにしてください」(カッコ内筆者)という注意を喚起するメールを一斉に登録済みの在留邦人に配信した。

大規模集会は無許可、場所変更

ところが実際はモナスを管理する事務所がプラボウォ派の集会開催を許可しなかったために、集会は場所をプラボウォ氏の選挙対策事務所に変更され、小規模な形で開催された。

日本大使館によると、モナスでの集会が無許可となり、集会場所が変更されたとの情報は入手していたという。しかしその変更された場所での集会に「満足せずにモナスに集まる支持者もいる可能性があると判断して訂正しませんでした」としたうえで、「プラボウォ側は開票速報の結果を認めていませんので、支持者がどのような行動に出るのか読めないところもあります」と経緯を説明している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英独仏首脳がトランプ氏と電話会談、ウクライナ和平案

ビジネス

豪11月就業者数は2.13万人減、予想外のマイナス

ワールド

米政府、ルクオイル外国資産の売却期限を来年1月17

ビジネス

米FRB、流動性管理へ短期債購入を12日開始 刺激
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中