最新記事

環境問題

ゴミ対策でレジ袋を有料化開始 インドネシア、なぜか環境省が慎重論

2019年3月8日(金)20時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

中国に次ぐプラゴミ排出大国インドネシアにとって、ゴミ削減対策は待ったなしの課題だ KOMPASTV / YouTube

<日本でも導入が予定されているレジ袋の有料化。環境問題への対策として世界的な潮流になっているが──>

海洋や河川などへの不法投棄で環境汚染や生物の生態系への影響が深刻化しているインドネシアで首都ジャカルタを中心にしたスーパーやコンビニなどの小売店で商品を入れるレジ袋の有料化が本格的に始まった。

中国についで世界で2番目にプラスチックゴミ(プラゴミ)の排出量が多いといわれるインドネシア。年間約322万トンのプラゴミが排出され、このうち約129万トンが海に流出あるいは投棄されているとの統計もある。

こうしたことからインドネシア政府、ジャカルタ州政府が本格的な対策として有料化を始めたものだが、環境森林省などはレジ袋の製造業界や小売店のビジネスに資するだけで、プラゴミ対策の根本的解決にはつながらないと「有料化」の問題点を指摘、慎重論を唱えている。

世界第4位の人口を抱えるインドネシアでは不法に投棄されるプラゴミが世界的な観光地であるバリ島の海を汚染する原因となっているほか、鯨などの海洋生物がプラゴミをエサと勘違いして食べて死亡するケースなどが報告され、世界的なプラゴミ対策の動きの中で対応が重要課題と指摘されてきた。

小売店はビニール袋を最低200RPで販売

インドネシア小売店協会は「政府が進めるプラスチックゴミの30%削減目標に協力するため、スーパーやコンビニのポリエチレンの袋(いわゆるレジ袋)を有料化する」ことを決め、3月1日から一斉に開始した。

スーパーの全国チェーンであるアルファマート、マタハリ・グループ、ランチマーケット、ラマヤーナ、スーパーインドなどの加盟社30社が一斉に最低1袋200ルピア(約1円15銭)の有料化に踏み切った。もっとも同様の有料化は2016年にも奨励されていたが、有料化が小売店の利益になるだけで削減への効果があまりないことから、継続する店舗と廃止する店舗に分かれるなど形骸化していた経緯があり、今回は業界全体での確実な取り組みを強調している。

ジャカルタの日系食料品スーパーの「パパイヤ」はすでに以前から200ルピアの袋代を上乗せしているほか、大手家電などを扱うAceハードウェア店などは大型で頑丈な袋のため「500〜1000ルピア(約3円50銭から7円)」での販売をしているという。

地元紙などによると、ジャカルタの州政府は近く知事令を出してレジ袋の製造会社に税金面での支援策を講じて生産量を抑制することなどを打ち出すことも検討している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中