最新記事

対中投資

全人代「一見」対米配慮の外商投資法

2019年3月7日(木)13時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

3月5日に北京の人民大会堂で開幕した全国人民代表大会(全人代) Jason Lee-REUTERS

今年の全人代における政府活動報告は、一見、対米配慮に溢れているように見える。その最たるものが技術移転強要などを禁止する外商投資法だ。今回はまず、同法制定にまつわる中国の国内外事情を追う。

外商投資法が生まれた背景

トランプ大統領は中国がアメリカ企業の知的財産権を侵害し、コア技術を盗んでいると中国を非難してきた。その中の一つが、外資企業が中国で活動しようとするときに、中国が外資企業に対して「技術移転を強制している」という非難であった。

これまで中国には「中外合資経営企業法」「外資企業法」「中外合作経営企業法」というものがあり、この3つを「外資三法」と称していた。

中国は、この外資三法の中で「技術移転を強制する」と明記した法律はないとして、「技術移転を強制している」というアメリカの対中批判を否定してきた。しかし実際上は「話し合いの下に」、結局は技術移転を強制しているのと同じ結果を招いてきたことは否めない。

2018年10月現在で、中国における外資系企業の数は約95万社に上り、外資導入額は約232兆円に達している。これらの企業からの不満を解決しないと、中国経済が傾く。 

3月5日の全人代(全国人民代表大会)開幕式で李克強首相は政府活動報告を行ない、新しく中国に入ってきた外資企業の増加率は、前年度比で70%増であったと述べた。

あれだけ米中貿易摩擦によりアメリカから激しく締め付けられているはずの中国であるにもかかわらず、実際には劇的に外資企業が増加しているのである。

それは、昨年の日本の動きから見ても、窺い知ることができる。

たとえば安倍首相は昨年10月25日から中国を公式訪問したが、このとき日本経済界のトップ約500人が同行し、中国の地方政府や金融機関あるいは企業などと50項目を超える協力を締結している。この1回の金額だけでも2兆円を超えているという。こういった動きを世界全体で考えるならば、外資企業の増加率が前年度比(1年間)で70%増になったこともあり得るのかもしれない。

その背景には、実はトランプ大統領の「アメリカ・ファースト」などに代表される保護貿易的な「一国主義」政策があり、関税の引き上げが必ずしも中国をのみ対象としているのではなく、世界各国が有形無形の影響を受けたために投資が中国に集中したという皮肉な光景が見えてくる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米共和党上院議員、中国製車両の禁止拡大へ法案

ビジネス

マクロスコープ:中東混迷に警戒感、3月短観 中堅中

ビジネス

中国3月製造業PMIは50.8、価格上昇圧力強まる

ビジネス

アングル:中東の高級車市場に戦火の影響、金箔仕上げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 5
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 6
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 7
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 8
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中