最新記事

テクノロジー

ポストiPhoneの次世代デバイスとは?──「アップルショック」後の未来を占う

2019年3月28日(木)13時20分
竹内一正(経営コンサルタント)

ユーザー層を広げる戦い

さらに、最新のアップルウオッチ シリーズ4にはFDA(米食品医薬品局)が承認した心電計機能が搭載された(残念ながら日本の厚労省はまだ承認していない)。心電計と心拍センサーがあれば、約8割の確率で心臓病の症状を見つけ出すことができるという。

さらに、着用者が急に転倒し、動かなくなった時にアップルウオッチがそれを感知して、家族などの緊急連絡先にメッセージを送ってくれる「転倒検出機能」があり、注目を集めている。

これは不整脈などの心臓疾患の高齢者を持つ家族にとってありがたく、安心を担保するアイテムとなる。しかも、ウエラブルという持続的なモニタリングは医療コストの低減にも役立つはずだ。その上、これまでアップル製品は若者が中心だったが、アップルウオッチなら高齢者も取り込んでいく可能性を持っている。

従来のアップル製品の「ユーザー体験」はユーザー自身の自己完結型だったのに対し、アップルウオッチによるユーザー体験は着用者の家族たちも巻き込む波及型で、これは新たなユーザー体験と言えるだろう。

ヘルスケア、医療の分野はジョブズ時代のアップルが進出できなかった新たな市場だ。

だからこそ、保守的な規制や商習慣でがんじがらめの医療業界が、暴れん坊アップルの参入を簡単に許す寛容性があるかどうかは疑問だ。それでも、高齢化社会という緊急の課題がアップル待望論を後押しすることは期待できる。

アップルの未来は、アップルウオッチの成否にかかっていると言っても過言ではないだろう。

第2回「ジョブズとクック、まったく異なる仕事の流儀」はこちら

[筆者]
竹内一正(経営コンサルタント)

ビジネスコンサルティング事務所「オフィス・ケイ」代表。著書に『スティーブ・ジョブズ 神の交渉力』(経済界)、『イーロン・マスク 世界をつくり変える男』(ダイヤモンド社)ほか多数。最新刊『アップル さらなる成長と死角』(ダイヤモンド社)が2019年3月に発売。

ニューズウィーク日本版 岐路に立つアメリカ経済
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月3日号(5月27日発売)は「岐路に立つアメリカ経済」特集。関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ

ワールド

米国防長官、「中国の脅威」警告 アジア同盟国に国防

ビジネス

中国5月製造業PMIは49.5、2カ月連続50割れ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 6
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 9
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 10
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中