最新記事

テクノロジー

ポストiPhoneの次世代デバイスとは?──「アップルショック」後の未来を占う

2019年3月28日(木)13時20分
竹内一正(経営コンサルタント)

アップルウオッチ シリーズ4には米FDA承認の心電計が搭載 Edgar Su-REUTERS

<今年初めに「アップルショック」が世界を襲った。中国市場でiPhoneの販売が失速する一方、ファーウェイなど中国ブランドのスマホの躍進が際立っている。今後アップルはどうなるのか、そしてポストiPhoneの次世代デバイスは登場するのか? 『アップル さらなる成長と死角』の著者で、アップルでの勤務経験もある経営コンサルタントの竹内一正氏が2回にわたって解説する>

◇ ◇ ◇


iPhoneは再び躍進できるか

2018年10~12月でiPhoneの販売高は約15%(前年同期比)減少した。それを捉えて「iPhoneは頭打ちになった!」という見出しのニュースがネットにあふれた。しかし、iPhone失速の兆候はそれ以前から表れていた。

iPhoneの販売台数ベースで見ると、2015年度(2014年10月~15年9月)からすでに頭打ちになっていることがわかる。2015年度で2億3122万台だったが、2016年度は2億1188万台、2018年度は2億1772万台で、過去4年では2015年度が販売台数のピークだった。

それをカバーするためにティム・クックCEOは高価格路線を打ち出し、売上額での成長を維持してきた。だが、iPhoneはブルーオーシャン(競争相手のいない未開拓市場)からレッドオーシャン(競争が激しい市場)に突入していたことは紛れもない事実だ。しかもスマホ市場全体が頭打ち感を漂わせている。iPhoneにこれまでと同じ成長を期待することはできない。

安価なiPhoneへの待望論

そこで、「アップルはiPhoneの廉価版を出すべきだ」との主張が散見される。しかし、筆者はそれには反対する。

なぜなら、アップルはコストダウンや他社のマネが上手い会社ではないからだ。

そもそも、企業には2種類ある。他社に先駆けて驚くようなイノベーションを起こす企業と、それをまねて安価な製品で儲ける企業だ。

アップルはイノベーションを生み出すのは得意だが、コストダウンは苦手で下手だ。なにより、アップル社員たちはイノベーションにはあらん限りの情熱を傾けるものの、コストダウンや他社のまねには軽蔑の眼差しさえ平気で送る。それはアップルの歴史が物語っていた。

ポストiPhoneは何か

クックが今やるべきことは、iPhoneの神通力が通用しなくなる前に、ポストiPhoneとなる主力商品を生み出し、さっさと新たな市場を作ることだ。
 
では、そのポストiPhoneとはいったい何か?

それはアップルウオッチだ。アップルウオッチは、高齢化社会のヘルスケア分野にアップルが参入するうえで大きな可能性を秘めている。

世間には、ジョブズが生んだiPhoneを握り締めて「これが無くては生きていけない!」と言い張るユーザーが少なくない。しかし2015年に登場したアップルウオッチは当初「無くても生きていける製品」に甘んじていた。ウエラブル端末としては力不足で、腕時計にしては高価すぎた。

しかし、「アップルウオッチに命を救われた」という人が2017年にニューヨークに現れ、状況はガラッと変わった。アップルウオッチの心拍センサーが異常を見つけ、利用していた男性が病院に駆け込み、九死に一生を得たのだった。アップルウオッチでは、そのように健康器具として人命を救助した事例が次々と報告されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、予想下回るGDPが圧迫

ビジネス

再送-〔ロイターネクスト〕米第1四半期GDPは上方

ワールド

中国の対ロ支援、西側諸国との関係閉ざす=NATO事

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円以外で下落 第1四半期は低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中