最新記事

中国経済

春節間近い中国で相次ぐ工場閉鎖 貿易戦争の影響は人員削減や工場の海外移転にも

2019年1月22日(火)08時33分

1月18日、米中貿易摩擦の影響で受注が減った中国の製造業企業は、2月の春節(旧正月)休暇のずっと前から工場を閉鎖する例が目立っている。写真は、広東州東莞市にあるデンマークの海運複合企業APモラー・マースクの工場で解雇通知書をもらうために列をつくる労働者。7日撮影(2019年 ロイター/Stella Qiu)

米中貿易摩擦の影響で受注が減った中国の製造業企業は、2月の春節(旧正月)休暇のずっと前から工場を閉鎖する例が目立っている。休暇明けも再開されず、廃業となる工場もありそうだ。

昨年末。広東州東莞市にあるデンマークの海運複合企業APモラー・マースクの工場で、塗装工として働くWang Zhishenさん(35)は小躍りした。会社から予期せず2カ月の有給休暇が与えられ、帰省して妻子と過ごせる時間ができたからだ。

しかし、それから1カ月も経たない年明け3日、Wangさんは解雇され、喜びは失望に変わった。

Wangさんによると、工場は12月初めから休業しており、自身を含め2000人がレイオフとなった。

マースクはロイターへの電子メールで、2000人をレイオフとしたことを確認した。同社は11月、米中貿易摩擦がコンテナ船の需要を直撃するとの見通しを示している。

中国遠洋運輸集団(COSCO)の子会社2社は、米中貿易摩擦に対応して広東省の船籍数を減らした。省統計局のデータによると、この結果、同省の貨物船の取扱高は急減している。

春節前後には例年、出稼ぎ労働者を含む中国人数百万人が帰省する。多くの工場は春節前に休業するのが通例だが、ロイターの取材によると、今年は例年より早く休業に入っている。

東莞市の景気は目に見えて減速。多くの小売店や飲食店がシャッターを閉じ、一部の工場は閉鎖され、多くは賃貸に出されている。

最近の週末の夕方、あるタクシー運転手は人のいないオープンエアの食堂を指し、「以前ならこの建物は労働者でいっぱいで、仕事帰りに食べてしゃべっていたのに、今はこの有様だ」と語った。

人口1億人以上の広東省は、総生産(GDP)が1兆3000億ドルと中国最大で、オーストラリアやスペインに匹敵する規模。広東省の景気減速は、中国沿岸部に位置する輸出依存型の省すべてにとって悪い前触れだ。貿易紛争が長引けば、国全体の成長率を引っ張ることにもなりそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中