最新記事

アメリカ政治

トランプが国境の壁にこだわる理由

Trump Sexually Aroused By Border Wall, Heilemann Says

2019年1月8日(火)14時00分
ベンジャミン・フィアナウ

「壁を作れ」の大合唱を始めると会場はすぐに盛り上がった(2016年3月、トランプ候補の選挙集会) Jonathan Drake-REUTERS

<支持者が壁建設を求めて大合唱した2016年の大統領選。トランプはあの興奮を忘れられず今も壁の建設に執着しているという>

ドナルド・トランプ米大統領はなぜ、多大な犠牲を払ってまでメキシコとの国境の壁建設にこだわるのか。政治ジャーナリストのジョン・ハイルマンは、国境の壁はドナルド・トランプ米大統領の「性感帯」だからだ、と言う。2016年の大統領選で支持者に大ウケした「国境の壁」というフィクションは、トランプにほぼ性的快感に近い興奮をもたらしているのだという。

2012年大統領選のバラク・オバマとミット・ロムニーの戦いについて記した『ダブルダウン:ゲームチェンジ2012』の共著者として知られるハイルマンは1月7日、MSNBCの人気番組『モーニング・ジョー』に出演。トランプが政府閉鎖を強行し「非常事態」宣言をほのめかしてでも壁の建設にこだわるのは、それが大統領選でトランプ陣営に大きな勢いを与えたスローガンだからだという。

トランプの選挙集会の定番だった「壁を建設せよ」の大合唱は、トランプと支持者たちを大いに煽り立てた。

しかしトランプは今、選挙戦を盛り上げた大合唱の責任を取って、連邦議会の2019会計年度の予算で約57億ドルの建設費用を確保する必要に迫られている。それができなければ公約がウソとばれ、2020年の大統領選を前に支持基盤を失うおそれがある。

聴衆の盛り上がりが快感に

NBCニュースとMSNBCの国内担当アナリストであるハイルマンは、アメリカ国民は「トランプ政権のウソだけでなく、大統領選におけるトランプ陣営の大きなウソに目を向けるべきだ」と指摘した。

「そこがトランプの性感帯なんだ」と彼は続ける。「トランプは、自分以外の人々が興奮する声を聞いて興奮を覚える。そして壁建設は、人々を即座に興奮させるという、彼にとって一番望ましい道具だった」

トランプの執拗な「壁建設」へのこだわりを性的欲望に関連づけたのは、ハイルマンが初めてではない。2018年12月には、新議会で下院議長となった民主党のナンシー・ペロシが、国境の壁にこだわるトランプにとって壁は「男らしさ」の象徴なのだと言った。

「壁を建設せよ」というスローガンはトランプにとって、少ないエネルギーで選挙集会を盛り上げるための言葉遊びにすぎなかった、とハイルマンは言う。「トランプは2016年にこんなことを言っている。『集会が盛り上がりに欠けている時にうってつけのフレーズを見つけた。『壁を建設せよ』だ。そうすれば大衆を刺激し、会場をエネルギーと熱意で満たすことができる』」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%

ワールド

ミャンマーで総選挙投票開始、国軍系政党の勝利濃厚 

ワールド

米北東部に寒波、国内線9000便超欠航・遅延 クリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中