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アリゾナ住民が自動運転車を次々襲撃、いったいなぜ?

Locals Attacking Self-Driving Waymo Cars in Arizona

2018年12月17日(月)16時30分
キャサリン・ヒグネット

アリゾナ州で配車サービスが始まった、ウェイモのハイブリッド自動運転車 Caitlin O’Hara-REUTERS

<自動運転車の実用化が進むアリゾナ州の町では、思わぬ敵意と憎悪が広がっている>

米アリゾナ州チャンドラーで、住民が自動運転車を襲撃する事件が相次いでいる。米グーグルの親会社アルファベットの傘下にある自動運転車会社「ウェイモ」の公道試験に腹を立てた住民が、タイヤを切り付けたり、銃を構えたりする事件まで発生した。

チャンドラー警察によれば自動運転車を標的にした襲撃事件は過去2年で少なくとも21件あったが、テストドライバーが訴えなかったためカウントされていない事件はもっと多いはずだいう。

ウェイモは12月5日、同州フェニックスで配車サービス「ウェイモ・ワン」を初めて商用化した。

だが自動運転「革命」は、同州テンペで今年3月に米ウーバーの自動運転車が歩行者の女性をはねて死亡させたことで、大きく後退を迫られた。

襲撃事件の一部は、こうした安全性への懸念が原因とみられている。またウェイモの親会社、アルファベットという企業に対する不満が引き金とみられる事件もあると、アリゾナ・リパブリック紙は報じた。

泥酔状態でウェイモ車の前に立ちはだかった男は、「ウェイモの車が近所を走り回るのには我慢がならなかった」と供述したと、警察の調書にはある。

アリゾナ州立大学のフィル・サイモン教授(情報システム)はアリゾナ・リパブリック紙に対し、多くの住民がウェイモのことを、自分たちの生活を広範に脅かす脅威として捉えていると語った。「自動運転技術の発展にせいで、仕事が奪われると心配する住民もいる」

銃を構える者も

警察は8月8日、ウェイモのドライバーを拳銃で脅したロイ・レオナルド・ハゼルトン(69)を逮捕した。「ハゼルトンはウェイモの車が大嫌いで、ウーバーがいかに通行人を轢き殺したかをまくしたてた」という。

ウェイモの広報担当者は声明で、同社は安全を「最優先」していると強調した。「安全はあらゆる事業の中核だ。過去2年間、道路をより安全にする自動運転技術の可能性を、アリゾナ州民も歓迎してくれた」

「アリゾナ州の消防や警察を含むコミュニティーと絶えず連携し、安全な環境を実現する」

米ジョージア工科大学のカリ・ワトキンス助教授とマイケル・ハンター准教授は12月10日に本誌に寄稿し、自動運転車が普及すれば交通事故件数は減少する可能性が高いと主張。また自動運転車のシェアリングが進めば渋滞の緩和にもつながると書いた。

しかし自動運転車は、人間のなかに敵も作ったようだ。

(翻訳:河原里香)

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