最新記事

太陽

太陽の北極の外観を推測した人工画像が初めて公開される

2018年12月6日(木)17時10分
松岡由希子

5ヶ月以上かけてデータをつなぎ合わせた Credit: ESA/Royal Observatory of Belgium

<欧州宇宙機関は、2009年に打ち上げられた「PROBA-2」の観測データをもとに推測した太陽の北極の人工画像を初めて公開した>

英国、ドイツ、フランスなど、欧州22カ国が加盟する欧州宇宙機関(ESA)では、米航空宇宙局(NASA)との共同事業として1990年に打ち上げられた太陽極域軌道探査機「ユリシーズ」や1995年に打ち上げられた太陽・太陽圏観測衛星(SOHO)、2009年に打ち上げられた小型衛星「PROBA-2」などを通じて、太陽の観測や探査に取り組んできた。

しかし、太陽の極域を観察する軌道に投入されたユリシーズを除き、太陽を低緯度から観測するものがほとんどで、太陽の極地については、まだ十分に調査されていないのが現状だ。

5ヶ月以上かけてデータをつなぎ合わせた

このようななか、欧州宇宙機関は、2018年12月3日、「PROBA-2」の観測データをもとに推測した太陽の北極の人工画像を初めて公開した。

An_artificial_Proba.jpgESA/Royal Observatory of Belgium

「PROBA-2」は、極地を直接観測できないものの、「PROBA-2」に搭載された極紫外線太陽望遠鏡「SWAP」で太陽大気を観測する際、太陽の円盤の周りに広がる太陽大気も含め、視界に沿ってすべてのものをデータで収集している。

そこで、研究者チームは、これらのデータをもとに極地の外観を推測することにし、2018年6月から5ヶ月以上かけてデータをパッチワークのようにつなぎ合わせ、人工画像を作成した。この人工画像は、コロナホールやアルヴェーン波、ロスビー波といった太陽の極地で起こる現象についてより深く知るための手がかりとなるという。

探査計画が進む太陽の極地

まだ多くの謎に包まれている太陽について解明をすすめようと、さらなる探査に向けた動きが活発になっている。米航空宇宙局では、2018年8月12日、太陽に"触れる"ことをミッションとする太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が打ち上げられた。太陽の表面から約400万マイル(約644万キロメートル)の太陽大気の中を航行しながら、太陽コロナを通じてエネルギーや熱がどのように移動しているかを追跡し、何が太陽風を加速させているのかを探る計画だ。

(参考記事)太陽コロナに触れる探査機、熱で溶けない4つの理由:NASAが8月打ち上げへ

欧州宇宙機関でも、太陽の極域を観測する太陽観測衛星「ソーラー・オービター」を2020年2月に打ち上げる計画を明らかにしている。

近い将来、これらの探査機や観測衛星からもたらされるであろう太陽の極地のリアルな姿は、いったいどのようなものなのだろうか。この人工画像との対比も含めて興味深い。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中